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JR東日本、鉄道電力設備保守にM2M活用へ――日立と共同開発

 株式会社日立製作所(以下、日立)は、鉄道や電力など屋外で広範にわたる社会インフラ設備の管理・保全を支援するM2Mネットワーク機器2製品を製品化し、11日発売した。

 2製品は、太陽電池と温度センサーを搭載したセンサーノード「AirSense Sensor Node/太陽光発電型(以下、太陽光発電型センサーノード)」と、携帯可能な小型・軽量ゲートウェイ「AirSense Gateway/モバイル型(以下、モバイル型ゲートウェイ)」。

太陽光発電型センサーノード
モバイル型ゲートウェイ

 日立は東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)と、M2M・IoTなどの技術を活用し、設備の状態把握・故障予測による効果的な設備メンテナンスの実現を目指して、鉄道電力設備を対象にしたセンサー機器の開発に共同で取り組んでいる。2製品はそうして開発されたもの。

 太陽光発電型センサーノードは、複数の温度センサーによる温度計測を行う。太陽電池と省電力制御技術を搭載することで、外部からの電源供給や電池交換が不要なほか、防水機能など風雨への耐候性に優れるため、屋内に直接設置できるのが特徴。従来のようにメンテナンス性を確保するために収納用キャビネットを設置する必要がなく、設置場所の制約を受けずに、屋外センサーの情報が収集できる。現時点では、温度センサーにのみだが、変位センサーなども順次拡充する予定。

 モバイル型ゲートウェイは、センサーノードから情報を収集し、無線LANを介してPC・スマートデバイスに転送する装置。重さ210g/幅76mmの手のひらサイズで、作業員が手軽に携行、あるいは車両に載せて巡回することで、広範な屋外のセンサー情報も効率的に収集できる。クラウドサーバーに情報を集めて予測・分析を行うことも可能という。

 価格へいずれも個別見積もり。出荷開始は12月5日より。

 製品化と併せて、JR東日本から鉄道電力設備への無線式センサー導入が発表された。変電所から電車へ電力を流す「き電線」の接続金具に無線式の温度センサーを取り付け、列車による巡回検査の際にデータ収集を行う。従来は歩いて検査をしていたが、最高130km/hで走行する列車で収集可能になるという。

き電線とは変電所から電車へ電流を流すための電線。数百メートルの電線をき電線接続金具で接続して構成している。接続部の温度管理が保全上大切となる

 これにより、き電線の劣化状態を把握。故障予兆の検知、CBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)による効果的な設備メンテナンス手法の確立を目指すという。

 なお、導入線区は常磐線・北千住~我孫子間(先行導入区間)。2015年4月より運用開始。他線区への導入は先行導入の検証結果を踏まえて検討する。

今後目指していくメンテナンス方法。き電線の温度計測頻度が高まり、データの分析の夜故障の予兆などが実現できる

川島 弘之