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IPA「IT人材白書2014」、ユーザー企業のニーズの変化に対するIT企業の対応遅れを指摘

 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は18日、IT人材に関する調査をまとめた「IT人材白書2014」の概要を発表した。

 IT人材育成事業の一環として、IT関連産業の人材動向、産学におけるIT教育などの状況と、IT人材個人の意識を把握することなどを目的として、2013年10月に実施した調査を基にしたもの。PDF版を無料でダウンロード公開するほか、製本版をAmazonおよび全国官報販売協同組合販売所で販売する。製本版の価格は1389円(税別)。

 「IT人材白書2014」のポイントとしては、ユーザー企業とIT企業のビジネスシフトに対する意識の違いを挙げている。調査によると、ユーザー企業が今後新規/拡大を予定している事業(SaaSサービス、PaaSサービス、IaaSサービス、IDCサービス)についてIT企業への関心は低く、逆にIT企業が今後新規/拡大を予定している事業(開発、運用、SI)についてはユーザー企業の関心が低い結果となっている。

IT企業とユーザー企業の今後3年間の新規/拡大予定の事業内容

 また、従来型の受託開発以外の事業を実施していない(検討していない)IT企業は、受託開発以外の事業の検討について「必要性を感じていない」と回答する企業が多く、従来型の受託開発以外の人材育成についても「検討を行っていない」と回答する企業が多くみられた。

 白書では、ユーザー企業における情報システムが“IT企業に発注して開発するもの”から、“サービスを選択して利用するもの”へと変化しているのに対して、IT企業が必ずしもこの変化に対応していないと推測されると指摘。IT企業における市場動向を見据えたビジネスモデルの構築には、ユーザー側のニーズの把握と、求められる人材育成が必要であり、そのためには経営者としての明確なビジョンが求められるとしている。

 IT企業のIT人材に対する不足感は、「質」に対する不足感は過去5年間の調査で大きな変化は見られないが、「量」については「大幅に不足している」とする回答が2012年度の12.2%から2013年度には19.0%となっており、増加傾向が続いている。

IT企業のIT人材の「量」に対する不足感【過去5年間の変化】

 人材採用については、IT人材において2012年度に中途採用した人の割合が、IT企業では3.4%、ユーザー企業のIT部門では3.6%であるのに対し、技術の変化が早いウェブビジネスを行う企業では27.1%と高く、人材の流動性が高いと指摘。また、重視する能力についても、ウェブビジネス企業では「ウェブ技術」「データ解析」「発想力・企画力「スピード感」といった項目を重視する特徴がみられたとしている。

 情報セキュリティ関連分野における関心事は、IT企業は「セキュリティマネジメント」が30.3%、「攻撃」が18.5%。ユーザー企業は「セキュリティマネジメント」が30.2%、「攻撃」が27.3%。IT企業、ユーザー企業とも、ウイルスなどの「攻撃」よりも、セキュリティポリシーや監査などの「セキュリティマネジメント(運用・体制)」に関心が高いという結果となった。

三柳 英樹