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「クラウドビジネスへの本気度がさらに鮮明になった」~マイクロソフトのパートナー支援施策

 米国テキサス州ヒューストンで開催されたMicrosoft Worldwide Partner Conference 2013において、米Microsoftは新たなパートナー支援施策「Cloud Competency(クラウドコンピテンシー)」制度を、2014年1月から開始することを発表した。

 日本マイクロソフトのゼネラルビジネスゼネラルマネージャーである高橋明宏執行役は、「Microsoftがクラウドビジネスに対して本気になって取り組む姿勢が、より鮮明になった」と、この新たな制度を位置づける。同社のクラウド戦略はどうなっていくのか。新たなパートナー支援策の展開を通じて、同社のクラウド戦略を追った。

クラウド関連の新たなパートナー支援策を展開

日本マイクロソフトのゼネラルビジネスゼネラルマネージャー、高橋明宏執行役

 Microsoftでは、パートナー支援プログラムとして、Microsoft Partner Networkを展開。その中核となる施策として、コンピテンシー制度を用意している。

 コンピテンシーは、製品やカテゴリーごとに分類されており、それぞれにゴールド、シルバーが用意されている。

 コンピテンシーの取得には、ゴールドの場合で、マイクロソフト認定プロフェッショナル(MCP)を4人以上雇用することや、一定の売り上げ条件を満たすなどの条件がある一方、インセンティブでの優遇措置をはじめ、さまざまな手厚いサポートが提供されることになる。

 これまでクラウドに関するパートナー支援策としては、クラウドエッセンシャル(Cloud Essential)や、クラウドアクセラレート(Cloud Accelerate)といった支援プログラムを展開しており、例えば、クラウドエッセンシャルで提供されるクラウドエッセンシャルパックは、SOHOや中小規模向けに展開するパートナー販売支援プログラムとして、最新のクラウド製品を無償提供することで使用してもらい、製品知識を高め、営業活動に活用できるほか、売り上げに応じた最大23%の報奨金の提供などを行っていた。

 日本マイクロソフトの高橋執行役は、「クラウドエッセンシャルや、クラウドアクセラレートによる支援策にとどまらずに、コンピテンシーとしての支援策が開始されることで、認定パートナーと、より緊密な支援関係を構築できることになる」とする。

 現時点では、コンピテンシー制度の詳細な内容については明らかにされていないが、9月5日に日本で開催される予定のJapan Partner Conference 2013においては、その詳細が説明されることになりそうだ。

 高橋執行役は、「マイクロソフトは、ここ数年でクラウドに対して、数多くの投資を行い、この分野で大きな成長を遂げてきた。だが、Microsoft Worldwide Partner Conference 2013では、その取り組みがまだ道半ばであることを示すものになった」とする。

 Microsoft本社のケビン・ターナーCOOの基調講演では、Office 365は前年比500%の成長率を達成し、売上高が10億ドルに達したこと、Windows Azureは前年比150%の成長を遂げ、同様に売上高が10億ドルに達したことのほか、Azureが、フォーチュン500社の半分で導入されたことなどを示し、「Microsoftはクラウドのリーダーとなっている」と宣言したものの、その一方で、現在、クラウドパートナーとして取り組んでいるのは、2万2000社にとどまっていることを指摘。「残りの63万社のパートナーはどうなっているのか。なぜ、クラウドに遅れているのか。クラウドに行こう」と呼びかけていた。

 高橋執行役は、「クラウドに移行することで、新たなビジネスチャンスが生まれる。日本の市場は、新たなものに対しては、保守的な姿勢があるが、当社のデバイスとクラウドサービスを活用することで、パートナーもエンドユーザーも高い成長へとつなげることができる」と語った。

 特にOffice 365 Openは、今回のMicrosoft Worldwide Partner Conference 2013において、対象となる製品をExchangeオンライン、エンタープライズ、ガバメントへと広げることを明らかにしており、パートナーが戦略的な提案を行える体制がさらに整うともいえる。

 「数を追うことも大切だが、収益を確保できる提案につなげることを、2014年度は重視したい」(高橋執行役)としており、クラウドに関するパートナー支援策が、コンピテンシーに一本化されることで、Office 365 Openの販売拡大にも寄与しそうだ。

日本品質の実現をクラウドでも目指す

日本マイクロソフトの樋口泰行社長

 一方、日本マイクロソフトの樋口泰行社長も、7月から始まった新年度において、クラウドビジネスに力を注ぐ姿勢を示す。

 米国では「リーダー」とするものの、日本では「チャレンジャー」と表現するクラウドビジネスにおいて、樋口社長が重視するのが「日本品質の実現」だ。

 「2104年度には、日本のデータセンターをきっちりと立ち上げて、日本のお客さまのニーズにきめ細かく応えていくことが大切」とする一方、「オンプレミスとのハイブリッド連携、クラウド同士のハイブリッド連携、パートナーが展開しているクラウドサービスとのハイブリッド提案が、日本マイクソロフトの強みになる」と語る。

 7月1日付けで、クラウド事業推進室を新設。日本マイクロソフト全体のクラウド事業を横ぐしにして、品質向上や各種課題解決、新たなオファリングへの対応などを行う。米本社のクラウド関連部門との太いパイプを作ることも重要な役割のひとつで、新年度から、クラウドサービスの品質を向上させることを目的に、日本法人の社員を米国本社に1人常駐させる。これによって、日本が求める品質の実現を加速する考えだ。

 さらに、2014年度において、重要なテーマのひとつとなっているのが、Windows XPのサポート期限の終了だ。

 2013年4月以降、日本マイクロソフトでは、パートナー企業との連携により、Windows XPのサポート期限終了に関する告知活動を積極化。その成果もあり、現在、日本国内で稼働しているPCのうち、Windows XP搭載PCの構成比は32%にまで減少してきたという。

 高橋執行役員は、「それでも1000万台強のWindows XP搭載PCがある。残り1年を切るなかで、大手企業や中堅企業までは移行スケジュール化が進み始めているといえるが、中小企業での移行が遅れていることを感じている。Windows XPからの移行にあたっては、新たなデバイスと、Office 365をはじめとするクラウドサービスの活用によって、効率的な業務環境への移行が可能なことを訴えてきたい」とする。

 一方で、同社ブランドのタブレットであるSurfaceは、2014年度第1四半期(2013年7~9月)からは法人向けルートでの販売が開始されることになる。ここでも新たな販売支援プログラムが用意されることになりそうだ。クラウド利活用を推進するためのツールとしてSurfaceを活用するといった提案も増えていくことになるという。

 Windows XPからの移行、そして新たなデバイスの商談においても、クラウドサービスの提案が重要な要素になりそうだ。

大河原 克行