NRI、被災シミュレーションを基にしたBCP策定コンサルサービス


 株式会社野村総合研究所(以下、NRI)は、官公庁・自治体・企業などが地震や津波のような自然災害に備えてBCP(事業継続計画)を立案する際に役立つ「被災シミュレーションツール」を開発し、同ツールを活用したコンサルティングサービスを5月21日より開始する。

 同ツールでは、中央防災会議の想定災害を収録し、それに基づいて拠点などの被害想定を算出。得られたシミュレーション結果を、サプライチェーンの堅牢性評価、出店計画や工場などの事業所設置計画の妥当性検討、拠点の被災評価と対策立案など、さまざまな用途に応用できる。

 具体的に、「拠点被災シミュレーション」と「従業員参集シミュレーション」の2つのメニューが用意される。前者では、本社・工場・営業拠点・データセンターなどの地理情報、各建物の構造や築年数などの情報を入力し、災害時の各拠点の被災状況をシミュレートする。拠点がある地域の震度想定にとどまらず、液状化、停電、断水などによる影響も画面で確認できる。

 後者では、自社の拠点および役職員の住居の地理情報を入力しておくことで、災害時に拠点に不在の役職員のどのくらいの人数が、どのくらいの時間で拠点に参集可能かを、役職員の住居から拠点までの鉄道・道路といった交通機関の状況も含めてシミュレートする。

 これらの結果を基に、NRIがBCP策定コンサルティングサービスを提供。拠点・工場の被災状況評価、サプライチェーンの堅牢性評価、店舗・拠点の新規出店評価、本部・各地域の緊急対策担当の拠点参集性評価に基づいて、最適なBCP策定を支援する。

 価格は、拠点被災シミュレーションが年額380万円から、従業員参集シミュレーションが年額490万円から。

 東日本大震災では想定を超える被害が発生した。その理由の1つとして、NRIが行ったアンケートによると「BCPが十分機能した」という回答が7%にとどまったように、災害に対する準備不足が挙げられる。

 BCPを策定している企業でも「単なる初動マニュアルをBCPとしているケースが多い。そもそもいかに業務を継続するかという観点であるべきだが、多くの場合、そこまで至っていない」という。

 NRIでは、「東日本大震災よりも大きな被害が予想される首都直下型地震や東南海・南海とも連動しかねない東海地震を想定し、これまでのBCPの考え方から大きくパラダイムシフトしなければならない」と話す。

南海トラフにおける海溝型巨大地震では、最大の生産拠点である中部地域が被災してしまう首都直下型地震では、都心の堅牢な建物こそ倒壊の恐れは少ないが、都心を囲むように火災延焼、交通寸断され、都心の孤立化が懸念される

 具体的にBCPは「緊急時に発動すべき意志決定を明記しておく」「議論を尽くしたクリアな方針を社員に示す」「経営陣の判断の基準の可視化により基準をそろえる」「優先すべき事業を明文化する」などを重視するべきとして、本当に機能するBCPの策定を支援する考え。

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(川島 弘之)
2012/4/20 13:41