日本HP、最大80TBを搭載可能な“瞬速”半導体メモリアレイ「HP VMAシリーズ」~応答速度はSAS HDDの約50倍高速


「HP VMAシリーズ」の筐体。この中に最大10TBの半導体メモリを搭載可能だ

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は13日、半導体メモリアレイ「HP VMAシリーズ」を発表した。1筐体あたりで最大10TB、システム全体では最大80TBのメモリを搭載でき、データベース処理などを超高速に行えるという。価格は2099万1600円からで、同日より販売を開始する。

 現在の企業では、市場やビジネスの変化に迅速に対応することが求められており、リアルタイムでのデータ分析が求められるようになった。しかし、「自社システム内であれば対応できても、他社との連携など、さまざまなところからリアルタイムではないデータを持ってくる必要があるため、どうしてもバッチ処理が残る」(エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 上原宏統括本部長)のが現状。そこで、バッチ処理の高速化が課題になっているという。


エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 上原宏統括本部長バッチ処理をいかに高速化し、リアルタイム分析に近づけていくかが鍵だという

 バッチ処理の高速化ということでは、さまざまなソリューションが提供されているが、注目されている手法の1つとしては、Oracle ExadataやIBM Netezzaのような専用のアプライアンスを導入する手法がある。

 こういったアプライアンスでは、システムの劇的な高速化を実現するケースが多々見られるものの、上原統括本部長は、「既存システムからの乗り換え作業が必要になるほか、ベンダーにロックインされてしまい、柔軟性が非常に少なくなる。また囲い込まれることで、価格の弾力性も失われる」といったデメリットを指摘。既存のデータベースシステムをいじらず、そのままハードウェアレベルで高速化できる製品として、「VMAシリーズ」を紹介した。


アプライアンス導入のメリットとデメリット「VMAシリーズ」を用いると、既存のデータベースシステムをいじらず、ハードウェアレベルでの高速化を実現するという

 

1筐体で10TB、最大80TBの超高速メモリアレイを実現

パススルーカードを介して、x86サーバー「DL980 G7」などのPCIeスロットへ直接接続する

 その「VMAシリーズ」の中核となるのは、1つの筐体に最大84枚、10TBの半導体メモリモジュール(SLCタイプ)を搭載可能な半導体メモリアレイ。PCI Express(PCIe) x8 Gen1接続のパススルーカードを経由して、8ソケットのx86サーバー「HP ProLiant DL980 G7」(以下、DL980 G7)、あるいはUNIXサーバー「HP Integrity」で利用できる。

 性能面では、「データベースパフォーマンスで重要となる、CPUとデータの電気的な距離(アクセス時間)を短縮しており、標準的なSAS HDDと比べて約50分の1、100μ秒の応答速度を実現」(エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 製品戦略室の山中伸吾室長)している。

 また北米のユーザーでのベンチマークにおいても、ETL処理では、既存の旧Sun Microsystems製品のシステムで83分かかったものを5.1分へ、クエリ実行時間では24秒から4秒へそれぞれ短縮されたとのこと。山中室長は、さらに、同様の処理を競合製品のOracle Exadataで行うと、それぞれ7.1分、16秒だったとのデータを示し、「Oracle Exadataと比べても高速に処理が可能だ」とアピールした。


「VMAシリーズ」とSAS HDDやSSDとの応答速度の比較北米の金融サービス企業で行ったベンチマークでは、劇的な性能改善を実証したという

 また、筐体は最大8台まで接続可能で、80TBまで容量を拡張できるほか、メモリモジュール4つにつき1つのパリティをとる4+1 RAID構成、ホットスペア対応によって信頼性も確保。企業での利用において気にされることが多いメモリの寿命についても、「書き込みを平準化してメモリの寿命を延ばすウェアレベリングに対応するので、1TB/時の書き込みを行うヘビーな用途でも5年は問題なく使っていただけるし、中のツールで寿命の確認もできる」(山中室長)と述べ、問題ないことを強調している。

 なお、サーバーのPCIeスロットに直接接続するだけでなく、同時に発売される「VMA SANゲートウェイ」を経由すれば、8Gbps FC接続で複数のサーバーからVMAの筐体を共有することも可能。ただしこの場合は、応答速度が直接接続と比べて倍の200μ秒になるほか、筐体は2台までの接続となる。

 価格は、最小構成となる容量5TBモデルの場合で2099万1600円から、10TBモデルの場合で4058万3550円から。またパススルーカードが17万4300円、「VMA SANゲートウェイ」が209万8950円から。

 日本HPではこの価格面についても自信を持っているとのことで、実際にGB単価は10TBモデルの場合4100円となり、400GB SAS SSDの3455円、320GB IOアクセラレータの5204円と比べても遜色(そんしょく)がない価格で提供できるという。

 さらに2012年4月末までは、DL980 G7と5TBモデルのメモリアレイを組み合わせて、約50%引きの2000万円で提供する「もしDBプラットフォームにDL980とVMAを使ったらセットで半額キャンペーン」(もし980)を実施。月間5セットを目標に、顧客での導入・検証を推進していくとした。


容量単価も、従来の半導体メモリ製品と遜色(そんしょく)がないというサーバーとメモリアレイを約半額で提供する「もし980」キャンペーンを実施

 「ターゲットはとにかくバッチシステム。例えば小売業の場合、データを分析しようと思っても、卸売業などが発達している日本では他社との取引が必須で、リアルタイムでデータがもらえないために、バッチをどう短くするかが鍵になる。システムのオープン性を確保しながらバッチを高速化できる『VMAシリーズ』の価値は大きい。また少し異なるところでは、大量データを計算するHPCもターゲットになるだろう。もちろん、すべての事例に『VMAシリーズ』が適用できるわけではないが、ハードウェアによる解決法として、お客さまにこれを提案していく」(山中室長)。


「VMAシリーズ」の対象市場半導体メモリモジュールを手にする、エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 製品戦略室の山中伸吾室長
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