「2位じゃダメ?」といわれたスパコン「京」、“2位以下に水を空けた”性能1位を獲得

LINPACKベンチマークで8.162ペタFLOPSを達成、TOP500リストで1位


理研の野依良治理事長(左)と富士通の間塚道義会長(右)
「京」の最新整備状況

 独立行政法人理化学研究所(以下、理研)と富士通株式会社は20日、共同開発中のスーパーコンピュータ(スパコン)「京」が、第37回TOP500リストにおいて、第1位を獲得したと発表した。日本のスパコンがTOP500リストで1位となるのは、2004年6月の地球シミュレータ以来という。

 「京」は、文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」計画のもと、2012年11月の供用開始を目指して開発されているスパコン。富士通が独自開発したCPU「SPARC 64 VIIIfx」を搭載する800台以上のラックや、8万個以上のCPU間を相互に接続するための「6次元メッシュ/トーラス」トポロジーを持つインターコネクトなどから構成されている。

 「京」の完成はまだ先になるが、今回は整備途中段階の672筐体(68544CPU、ピーク性能8.774ペタFLOPS)の構成でLINPACKベンチマークを走らせ、8.162ペタFLOPSを達成。TOP500リストで第1位となった。また実行効率も、世界トップクラスの大規模スパコンとしては驚異的という、93%を達成している。

 理研の野依良治理事長は、2位の「天河1A号」(中国)が2.566ペタFLOPS、3位の「Jaguar」(米国)が1.759ペタFLOPSにとどまっていることを指摘し、「世界に水を空けて1位になったことをうれしく思う。一体となってまい進した結果のたまものである」とコメント。富士通の間塚道義会長も、「昨年9月27日に最初のロットを理研に納めて以来、9カ月という短期間で8ペタFLOPSという性能を出せたのは、最先端の技術にチャレンジしてきた成果であると自負している。関係する方々に感謝したい」と、喜びを示す。

 また、東日本大震災の影響で一時的に製造・出荷が中断したことをあかし、「東日本大震災で製作中断に追い込まれながらも、部品の製造を担ってくれた被災地の協力会社の、並々ならぬ製作への強い意志と努力に敬意を表する」(理研の野依理事長)、「今回第1位を獲得できたのは、被災された協力企業の絶大な支援があったから。あらためてお礼を申し上げる」(富士通の間塚会長)と、感謝のメッセージを送っていた。


理研 計算科学研究機構 機構長 次世代スーパーコンピュータ開発実施本部の平尾公彦副本部長

 完成時には、LINPACK性能で10ペタFLOPSを目指しており、「純国産のスパコンである京の活用で、シミュレーションや解析速度が飛躍的に向上する。例えば、太陽光発電に利用するような新しい材料、地球気象変動、地震津波のシミュレーションによる災害軽減などに使っていただきたい。広く利用されることで、世界最高水準の成果を創出したい」(理研 計算科学研究機構 機構長 次世代スーパーコンピュータ開発実施本部の平尾公彦副本部長)とした。

 なお「京」は、2009年の事業仕分けの際に、民主党の蓮舫参議院議員(現・行政刷新相)が「2位じゃだめなんでしょうか」などと質問されたと報道され、予算の削減が検討されたが、その後復活した経緯がある。この点について理研の野依会長は「事業仕分けの時はいろいろな意見があったが、最終的には理解いただいて補正予算でサポートしていただいた。私どもとしては国に対して非常に感謝している」としながらも、「科学技術ではトップを目指さないといけない」と発言。

 また、富士通の間塚会長は「世界一に挑戦する中で数々のイノベーションが生まれてきた。若い人も目を輝かせてがんばってくれたし、世界一にチャレンジするのは重要なこと」、常務理事 次世代テクニカルコンピューティング開発本部の井上愛一郎本部長は、「必ずしも若い人だけではなく、過去にがんばってきたエンジニアたちも、今回の挑戦があって再度がんばってみようということで、経験を積んだ人たち、いろんな人たちが集まって今回の成果になっている。人、技術を育てる両方の意味があり、元気を日本に引っ張り込むことが大きな意味を持っていたと思っている」と述べ、この開発には大きな意義があったと述べている。

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