ニュース

米Intel、新世代XeonやOPTANEなどデータセンター向け製品群を一挙に発表

プレス向け事前説明会の内容も紹介

 米Intelは4月2日(米国時間)、第2世代Xeon Scalable ProcessorやOptane DC Persistent Memoryなど、データセンター向け製品群を一挙に発表した。

 ここでは、発表に先立って3月上旬に同社が開催したプレス向け事前説明会での内容も含め、全体概要を紹介したい。

3つの柱「Move Faster」「Store More」「Process Everything」

 “データ爆発”と言われた状況から、さらに昨今のAI/機械学習/ディープラーニングの普及によって、データの価値がますます高まっている。Intelでも繰り返し“Data-Centric”というキーワードをアピールしており、“データ中心の時代”を支える製品群を提供していく、という姿勢を鮮明にしている。

 同社のVice President & General Manager, Intel Xeon Products and Data Center MarketingのLisa Spelman氏は、データ量の増大ペースがさらに加速していることや、コネクティッド・デバイスの急増と、それらが生成する大量のデータの処理がエッジ側で行なわれるようになるといったトレンドを指摘。

 クラウドコンピューティングへの移行、AIやアナリティックス需要の急増、そしてクラウド時代に対応する新たなネットワークやエッジが求められるようになってきていることを踏まえた上で、同社のデータセンター向け事業が取り組む3つの大きな柱として、“Move Faster”(より高速なデータ移動)、“Store More”(より大量のデータを格納)、“Process Everything”(大量データの高速処理)を掲げている。

Lisa Spelman(リサ・スペルマン)氏 Vice President & General Manager, Intel Xeon Products and Data Center Marketing

 単純化してしまえば、Move Fasterはネットワーク関連、Store Moreは「SSDより高速、DRAMより安価な新世代デバイス」と位置づけられるOPTANE関連、そしてProcess Everythingは、新世代Xeon Scalable Processorや近年、同社が力を入れているFPGA関連の新製品のことを指していると理解すれば良いだろう。

Spelman氏プレゼンから。今回発表の新製品の概要

第2世代Xeon Scalable Processor

 では、製品ごとに大まかな概要を紹介していこう。

 まず、新世代Xeon Scalable Processor(開発コード名:Cascade Lake)だ。こちらは、「第2世代」(2nd Gen.)と位置づけられている。新製品全般の概要説明を行った、同社のVice President & General Manager, Data Center Product Management and StorageのJennifer Huffstetler氏は、新世代のXeon Scalable Processorが従来同様のPlatinum/Gold/Silver/Bronzeの4モデルで提供され、4桁の型番のうち百の位に相当する位置が第2世代を意味する“2”となることなどを紹介した。

Jennifer Huffstetler(ジェニファー・ハフステットラー)氏 Vice President & General Manager, Data Center Product Management and Storage
Huffstetler氏プレゼンから。第2世代Intel Xeon Scalable Processor(Cascade Lake)の大まかなモデル構成

 最上位となるPlatinum 9282は56コア/2.6GHz~3.8GHz(Turbo時)を実現しており、旧モデルのPlatinum 8180との比較で平均2倍の性能向上を達成しているという。AI処理の急増に対応し、“Intel Deep Learning Boost VNNI(Vector Neural Network Instruction)”と呼ばれるAI処理高速化機能が実装されたのもトピックとなるだろう。

Intel Xeon Platinum 9200 Processorsの概要
第2世代Intel Xeon Scalable Processorでの性能向上

 さらに、エッジ領域での利用を想定した“Intel Xeon D-1600 Processors”や、新しい10nm FPGAの“Agilex”なども発表されている。

Intel Xeon D-1600の概要

 なお、同社のPrincipal Engineer & Cascade Lake Lead ArchitectのIan Steiner氏は、2012年にリリースされたIntel Xeon E5-2600 Processorと今回発表された“Cascade Lake”との違いをまとめたスライドで、2012年にはクラウド対応がまだ初期段階だったこと、重視されたポイントが低消費電力からコスト辺りのスループットに変わったこと、処理能力を必要とする処理がHPCのみから“HPC+Analytics+AI Everywhter”といった具合に拡がりをみせていることなどを指摘。

 その上で、プロセッサのバリエーション提供に関する考え方も変化しており、かつての汎用的な構成の少数のSKUを提供する形から、Cascade Lakeでは「カスタマーごとに最適化/ワークロードに特化」した多数のSKUを提供するようになっているとしている。

 こうした方針を受け、ワークロード特化型のSKUにはその用途/特徴を示すアルファベットが型番に加わっている。例えば、“L”は大容量メモリサポート、“N”はネットワーキングやNFV向け、“T”は“Thermal & Long Cycle Support”の意味で、温度条件が厳しい用途向け、といった具合になっている。

Ian Steiner(イアン・シュタイナー)氏 Principal Engineer & Cascade Lake Lead Architect
Intel Xeon Scalable Processorの型番の命名規則。現状では、4桁の数字(+アルファベット1文字)で構成され、左から2桁目(百の位)が“2”となっていると第2世代の意味
第2世代Intel Xeon Scalable ProcessorのSKU一覧表。これで全てというわけではないと思われる。かつてのシンプルなモデル構成が懐かしく思えるほど、バリエーションが増えている
第2世代Intel Xeon Scalable ProcessorのSKU一覧表(2)。こちらには、おおよその仕様や価格が示されているが、最上位の9200シリーズの情報は含まれていない

Optane DC Persistent Memoryが一般向け出荷開始

 次に、以前からアナウンスはされていた新たなメモリデバイスとして“Optane DC Persistent Memory”も、ついに一般向け出荷開始が発表された。SSDなどで使われているフラッシュメモリに比べて高速な、相変化メモリを使ったメモリモジュールで、不揮発性メモリとして利用可能だ。

 従来のDIMM-DRAMモジュールと物理的/電気的な互換性を維持しており、既存のサーバーのDIMMスロットに挿せるようになっている。ストレージメディアの主流はすでにHDDからSSDに移行しているが、メモリに関しては長らくDRAM以外の選択肢はなく、「メモリかストレージか」というシンプルな階層構造でデータを扱っていた状態から、Optaneの投入によって、新たにDRAMとSSDの間に2階層が追加された形になっている。

 「Optane DC Persistent Memory」は前述の通りDIMMモジュールとして提供され、端的に言えば「DRAMよりは遅いがより大容量のメモリモジュール」として扱える。一方、「Optane DC Solid State Drive」はSSDよりも高速なストレージデバイスという位置づけだ。

 結果として、DRAMとSSDの間に「Optane DC Persistent Memory/Solid State Drive」の2階層が追加された形になる。

 Optane DC Persistent Memoryに関しては価格が明確になっていないため、DRAMに比べてどの程度安価になるかが分からないのだが、IntelによればDRAMよりも安価に大容量を実装できるという。実際にデモで見られた構成では、モジュール辺りの容量でDRAM-DIMMの2倍程度の容量のOptane DC Persistent Memoryに交換している例が多かった。

 価格面はさておくとしても、実際のサーバーのメモリ容量は、現実的にはDIMMスロットの数で制約されているのが一般的なので、モジュール辺りの容量を2倍にできればメインメモリサイズの大幅拡大が実現できる、というメリットに繋がる。

 Optane DC Persistent Memoryを不揮発性メモリとして利用するためにはアプリケーション側の対応が必要ということで、こちらはしばらく時間を要することになるだろうが、従来のDRAMと互換の「大容量でやや低速の揮発性メモリ」としてしてなら、単にDIMMスロットに挿すだけで利用可能となるので、まずは大量のメモリを必要とするインメモリデータベースなどの用途で利用されていくことになるだろう。

Optane DC Persistent MemoryおよびOptane DC Solid State Driveが追加されることでメモリ/ストレージの階層構造に新たなレイヤが2つ追加されるという

新しいEthernetアダプタ「Intel Ethernet 800 Series」

 最後に、“Move Faster”の領域では、新しいEthernetアダプタとして「Intel Ethernet 800 Series」(コード名:Columbiaville)が発表された。従来の700 Seriesが40GbE対応だったのに対し、800 Seriesでは100GbE対応となり、順当に性能向上を果たしている。

 また、新たにアプリケーション最適化機能として「Application Device Queues(ADQ)」が実装されたのもポイントだ。ADQでは、アプリケーションごとのトラフィックを識別してそれぞれに独立したキューを割り当てて最適化制御を行うことで、アプリケーションのレイテンシを一定に維持することができるという。

Ethernet製品の進化。500 Series、700 Series、そして今回発表の800 Seriesと順当に高速化を達成してきている

 なお、今回の発表とは直接の関連はないが、3月中旬にNVIDIAがMellanoxを買収することが発表されている。Mellanoxの買収にはIntel自身も名前が挙がったことがあるが、高速ネットワーキングの分野ではInfiniband/Ethernetともに市場からの支持が厚いリーディングカンパニーであった。つまり、NVIDIAはGPUに続いてネットワーキングの分野でもIntelに対抗できる力を得たことになると考えられるので、今後この買収を受けてIntelのネットワーキング製品への取り組みがどうなっていくのか興味深い。

*****

 個々の製品の詳細については別記事に譲りたいが、全体概要を紹介するだけでも相当な分量になってしまうだけの大量の製品発表が一度に行われたことになる。

 ここ数年、Intelは製造プロセスの微細化が予定通りに進まなかったり、そのせいで長年にわたって維持してきた「ムーアの法則」に沿った性能向上をペースを維持できなくなったりといった、苦しい時期を過ごしてきたように見える。

 しかし、その間にも同社の内部ではさまざまな技術開発が進行していたわけで、その成果がここにきてようやく製品として市場に出てきたということだろう。一般的にはやはりXeonプロセッサの世代交代が一番の目玉となるのかもしれないが、個人的にはOptane DC Persistent Memoryがもっとも気になる製品だ。

 同社の主張通りにこの製品が従来のメモリ階層を変更し、コンピューティングアーキテクチャを刷新することになるのかどうか、市場の反応が気になるところだ。