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テラデータがエンタープライズAI戦略を説明、「これまでにないアナリティクスソリューションを提供可能に」

 日本テラデータ株式会社は6日、サービス部門Think Big Analyticsが提供するエンタープライズAI戦略について説明した。

 日本テラデータ Think Bigアナリティクス本部長の小峰誠司氏は、「日本テラデータは、ビジネスコンサルティング、データサイエンス、ソリューション開発というアナリティクスに必要な3つの要素から、エンドトゥエンドのアナリティクスソリューションを提供できる。これに、新たにAIを加えることで、これまでにないアナリティクスソリューションを提供できるようになった。テラデータでは、AIによって、レコメンデーションエンジン、カスタマージャーニー、需要予測、PAM/IoT、コンピュータビジョン、アナリティクスの自動化、音/音声/言語処理といった、7つのビジネスオファリングを提供できる」と述べた。

日本テラデータ Think Bigアナリティクス本部長の小峰誠司氏
テラデータの戦略
7つのビジネスオファー

 小峰氏は、外資系投信投資顧問会社で日本法人のCIOを務めたほか、外資系ビジネスコンサルティング会社の業務改革プロジェクトへ参画した実績を持つ。また、日本オラクルのコンサルティング営業部長などを歴任。2017年9月から現職に着任している。

 「ビジネスアナリティクスソリューションにおいて、ビジネスコンサルティング、データサイエンス、ソリューション開発という3つの部門が、同じフロアで、一緒になってプランニングやディスカッションを行い、パッケージ化して提供することができる会社はそれほど多くない。こうしたソリューションが出そろった段階にあり、そこに魅力を感じた」などと話した。

 Think Big AnalyticsはもともとTeradataが2014年に買収した企業で、2017年にTeradataのグローバル・サービス部門の一部となり、OSSに特化したコンサルティングとソリューションを提供。ビジネスコンサルティング、データサイエンス、ソリューション開発、ビジネスインテリジェンスの分野を担当している。

 「Think Big Analyticsは、2017年には製造・通信分野で需要が拡大しており、2018年は金融分野に力を注いでいくことになる。グローバルでの顧客数は100社以上であり、コンサルタントは1000人以上に拡大するとともに、データサイエンスおよびエンジニアチームを拡大した。RACE(RAPID ANALYTIC CONSULTING ENGAGEMENT)のグローバルユースケースも、製造で50社以上、金融で200社以上、小売りで150社以上、通信で100社以上に達している。日本では、2017年度(12月末締め)の対予算比で170%を達成する見通しであり、今後半年間もすでに多くの需要がある。それにあわせて、雇用を増やしていく予定である」と好調ぶりを示した。

データサイエンスのAs a Serviceプログラム「Agile Analytics Factory」

 Teradataが全世界260社のグローバル大手企業を対象にした調査によると、80%の企業がすでにAIを実装しており、ビジネスリーダーの3人に1人が、今後3年間でさらなるAIへの投資が必要だと考えている。また、53%の企業がAIによって収益増加を期待しており、47%の企業がコスト削減/効率性向上といった成果を期待しているという。

 だが課題としては、AIソリューション導入判断、ソリューション構築、実装に関して十分なスキルを持った人材が十分とした企業が、28%にとどまっているとのこと。「AIのスキルを持った人材が不足していることで、うまくAIの導入ができないという課題がある。こうした企業を支援するのがテラデータの役割になる」とした。

AI活用の調査を実施

 日本テラデータ Think Bigアナリティクス・データ・サイエンス・プラクティス ジャパン・プラクティス・ディレクターの津田高治氏は、これを補足するように、「Think Bigアナリティクスでは、データサイエンスのAs a ServiceプログラムであるAgile Analytics Factoryを通じて、Velocity Service Portfolioの22個のサービスを提供したり、ユーザーの事例を通じて、データサイエンスのユースケース運用や、データガバナンス、反復可能な分析プロセスの作成などの課題を、エンド・トゥ・エンドで支援したりできる」と説明する。

エンドトゥエンドのアナリティクスを提供
Velocity Service Portfolio
Agile Analytics Factory
日本テラデータ Think Bigアナリティクス・データ・サイエンス・プラクティス ジャパン・プラクティス・ディレクターの津田高治氏

 また、「AIアクセラレータであるAnalyticOps Acceleratorは、アナリティクスの分析基盤と位置づけられ、AIの開発、テスト、実装、メンテナンスを支援するフレームワークとして、個々の顧客と一緒にAIを活用したIT環境を構築することになる。Financial Crime Acceleratorは、金融分野向けの専用のAIアクセラレータであり、金融の不正パターンの検出にAIを活用することになる。全体像をとらえて、不正を検知するという先進的な仕組みになっている」と語った。

AnalyticOps Accelerator
Financial Crime Accelerator

デンマークの金融大手での活用例

 このほか、デンマークの金融大手であるDanske Bank(ダンスケバンク)において導入したAIの活用事例についても説明した。この実績をベースに、Financial Crime Acceleratorが誕生している。

 Danske Bankでは、不正検知においてデータ駆動型アプローチを導入。オンラインバンキングやクレジットカード、モバイルマネー、現金などの切り口で、どの業務から発生したデータかを判断し、必要なデータを収集して、データの前処理を実行している。また、不正取引に特徴的なパターンを過去の取引データから学習して、分析モデルを構築。AIを活用して自動的にルールを生成する。さらにデータを定期的に取り込み、モデルを自動的に改善しているという。

 日本テラデータ Think Bigアナリティクス クライアント・サービス ディレクターのマット・マックデビット氏は、「現行モデルでは70%以下の不正取引しか検知できないという問題があった。今回の仕組みでは、ルールの自動生成を可能とし、さらに大量の変数を使うことにより、高度な不正検知が可能になった。また、新たな不正パターンにも、迅速に、自動的に対応できるようになった」と説明する。

 ただし、「不正と判断した理由がブラックボックスになること、データの種類や量が増加すると、ロードの時間や使えるようにするために時間がかかるという課題があった。こうした欠点を最低限に抑えるようにした。AIの欠点を補うために、オープンソースアプリのLIMEを実装し、AI活用モデルがブラックボックス化することを排除して、モデルの信頼性を向上した」とも述べた。

 さらに、「来年から実施されるEUにおける新たな規制にも対応できる。また、異常検知の状況を画像で表示し、可視化している点も特徴のひとつである」と述べた。

 高度な深層学習モデルを活用することで、不正検出率は50%増加し、不正の誤検出率を60%以上削減。数百万ユーロ(日本円で数億円)に相当するコストを削減することに成功。顧客満足度を向上することができたという。

Danske Bankの事例
データ駆動型アプローチによる不正検知
ビジネス課題を分析上の問題に変換
ビジネス成果
日本テラデータ Think Bigアナリティクス クライアント・サービス ディレクターのマット・マックデビット氏

どんなアナリティクスでも行える環境を提供

 説明会では、Teradataが10月22日~26日(現地時間)に米国アナハイムで開催したイベント「Teradata PARTNERS Conference 2017」(以下、PARTNERS)において発表した内容についても紹介した。

 PARTNERSは「THE EDGE OF NEXT」をテーマに開催され、「Teradata Everywhere戦略」が発表された。

 どんな分析ツールにも対応し、拡張に優れた「Analyze Anything」、柔軟な展開オプションを提供する「Deploy Anywhere」、ソフトウェアの購入オプションを多様化した「Buy Any Way」、投資の保護と移動性を実現し、さまざまな環境構築を可能とする「Move Anytime」という4つの観点で構成され、アナリティクスへの投資リスクを低減するとともに、高い費用対効果を確保。柔軟で、アジャイルで、スケーラブルなアナリティクス ケーパビリティを提供できると位置づけている。

 日本テラデータ エンタープライズ・データ・コンサルティング本部 ビッグデータ分析ラボの島田茂部長は、「どんなデータでも、どんな環境でも、どんなアナリティクスでも行える環境を提供。どんなところにも低コストでデプロイし、どんなところでも購入でき、データをどんなところでも活用できるのが、Teradata Everywhere戦略となる」とした。

 さらに、「Teradata Analytics Platformは、Teradata Everywhereを実現するプラットフォームであり、ここには、買収したAsterのほか、SparkやTensorFlowも取り込む。さまざまなアナリティクスツールと言語に柔軟に対応し、さまざまな非構造データも取り込んでいくことができる」などと述べた。

 Teradata Analytics Platformは、2018年上半期から提供を開始することになり、さらに、下半期に向けて拡張を行っていく予定も明らかにした。

 「Teradata Analytics Platformは、上半期時点では、Aster Engineだけだが、下半期にはSpark Engine、Deep Learning Engine、Custom Engineが加わることになる」とした。

日本テラデータ エンタープライズ・データ・コンサルティング本部 ビッグデータ分析ラボの島田茂部長
Teradata Everywhere戦略
Teradata Analytics Platform

 また、Teradata IntelliSphereについても説明。「データ収集、管理、適用、アクセスの4つの主要機能を包括したソフトウェアポートフォリオであり、アナリティクスに関するものは、すべてそろっており、いつでも、どこでも利用できるようになる。さらにユニークなのは、ライセンス体系。テラデータのハードウェアの性能ベースで課金されるサブスクリプションモデルとなっており、現在、10種類用意されたソフトウェアコンポーネントを自由に利用できる。また、新たなソフトウェアコンポーネントソリューションがリリースされた場合には、ライセンス価格はそのままで利用できるようになる」とした。

Teradata IntelliSphere