インタビュー

Dellのエンタープライズ事業、「競合に対する強みはオープン性」

 Dellのエンタープライズビジネスが好調だという。2012年第4四半期にはサーバー事業で6%増、ネットワーク事業で100%増(買収して増えた分を除くと40%増)、ストレージ事業で12%増の成長を遂げたとのことだ。この3つの事業に加え、2012年11月には統合されたインフラソリューションを提供することを目的に、エンタープライズシステムズ&ソリューションズという新たな事業部が設立されている。

 この新たな事業部の責任者となるDell エンタープライズシステムズ&ソリューションズ担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャのダリオ・ザマリアン(Dario Zamarian)氏と、サーバー事業の責任者であるDell サーバープラットフォーム バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャのフォレスト・ノロッド(Forrest Norrod)氏に、同社のエンタープライズビジネスについて聞いた。

買収企業の技術統合は順調に進んでいる

――Dellはこのところ、Credant TechnologiesやGale Technologies、Quest Softwareなど、主にソフトウェア企業の買収を積極的に行っています。買収した企業のDellへの統合はうまくいっているのでしょうか。

米Dell エンタープライズシステムズ&ソリューションズ担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャ ダリオ・ザマリアン氏

ザマリアン氏
 企業買収で重要なのは、イノベーションを保持し、買収前の良い部分を失うことなくDellになじませることです。そのために人材をうまく獲得し、ロードマップを迅速に実行できるようにしています。

 例えばGale Technologiesは2012年11月に買収が成立しましたが、同社の技術を採用した具体的な製品として、すでにブレードベースのシステム管理製品「Active System 800」を発表しています。

 2011年夏のネットワークベンダーForce10 Networksの買収でも、9カ月後には同社のブレードスイッチをすべてのサーバーシャーシに導入できています。企業買収は、製品を統合してこそイノベーションの継続につながるのです。

 新しい事業部を設立した理由もそこにあります。Dellでは5年ほどかけて約120億ドルを投資して約20社の買収を行い、必要なテクノロジーをそろえました。市場では、単体の製品ではなく、サーバー、システム、インフラなどを組み合わせて最善のソリューションを作り上げる方式が求められています。こうしたニーズに対応するのがわれわれの事業部です。

Dellの強みはオープン

――競合他社でも同じように統合されたソリューションやアプライアンス製品を提供しています。Dellの強みはどこにあるのでしょう?

米Dell サーバープラットフォーム バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャ フォレスト・ノロッド氏

ノロッド氏
 サーバーの観点から競合に対する強みを話すと、まずDellはx86テクノロジーのリーダーであることが挙げられます。Dellのx86サーバーは、Hewlett-Packard(HP)のメインストリームサーバーと同じCPUを使っても11%パフォーマンスが高い、という結果が第三者機関から出ています。また、消費電力もHP製品より28%、IBM製品より20~25%、効率が良いという結果が出ています。

 さらにDellでは、サーバーとストレージ間で自動的にデータを移行し、ストレージの集中管理が可能となる「Fluid Cache」という技術を提供しています。Fluid Cacheは、データの重要度によって適切な場所にデータを流す技術です。

 例えば、高速なパフォーマンスが必要なデータは、ストレージではなくサーバーの中に入れてしまいたいと考える人もいるでしょう。データベースの速度を10倍から100倍にまで高速化できますからね。しかし、サーバーの中にデータを入れると、サーバーの障害時にデータにアクセスができなかったり管理が大変だという課題がありました。

 この課題をFluid Cacheが解決するのです。最も重要なデータをストレージアレイからサーバーに自由に流しつつ、これまでと同様に保護や管理ができるのがFluid Cacheです。この技術を使ったソリューションの幅を今後もさらに広げていきたいと考えています。

ザマリアン氏
 顧客がDellを選択する最大の理由は、Dellがオープンソリューションプロバイダーだという点です。われわれのソリューションはオープンなので、顧客はいつだって製品の一部または全体をリプレイスしたり変更したりできます。インフラの導入や展開においては、オープンであることで経済性と効率性が高くなるのです。

 他社の提供するプロプライエタリなテクノロジーを採用すると、永遠にそこから抜け出すことはできません。Dellはオープンの一歩先まで進んで、Dell以外の製品もサポートしています。顧客のデータセンターにはDell以外にもさまざまな製品が混在していますからね。

 Dellでは、競合に勝つためのソリューションを「Active Infrastructure」として打ち出しています。Active Infrastructureで注力する点は、あらかじめ設定されたベストなテクノロジーやソリューションをひとまとめにした拡張可能なデザインであるということです。

 このソリューションでは、まず顧客が何をしたいのか明確に定義することから始まります。データセンターを統合したいのか、拡張したいのか、古いアプリケーションを新たなサーバーに移行したいのか、目指すアーキテクチャについて話し合い、顧客とのコラボレーションで作り上げていきます。Dellは、顧客がベストな選択をするための支援をしているのです。

 Active Infrastructureは、2012年11月に米国にて展開を開始し、現在拡大期にあります。初期の顧客からのフィードバックはおおむね良好で、今年の夏には同様のソリューションをヨーロッパやアジア太平洋地域でも展開していきたいと考えています。

Hadoop関連の取り組みも進展

――このところ各ベンダーでビッグデータに対する取り組みが進んでいますが、Dellのビッグデータへの取り組みについて教えてください。

ノロッド氏
 Dellでは、Hadoopを迅速に導入できるパッケージソリューションを提供するため、Hadoopを扱うオープンソース関連のパートナーとチームを組んでいます。

 Hadoopの先進的な顧客とビッグデータへの取り組みを進めてきた結果、導入と維持がとても大変だということに気がついたからです。そこでわれわれは、オープンソースの「Crowbar」というツールを開発しました。

 Crowbarは、クラウドやデータセンターにおけるビッグデータソリューションの展開とメンテナンスを行うためのツールです。このツールを導入すれば、以前はHadoopの稼働に数週間かかっていたのが数時間で実現します。インフラの導入に時間をかけることなく素早くビジネスバリューにたどり着くことができるのです。

――最近アジアといえば中国ばかりが話題になり、日本への注目度が落ちているように感じます。Dellでは日本市場をどう見ていますか。

ザマリアン氏
 日本市場はとても大きく大切な市場です。今回の来日の主な目的は営業担当者向けのトレーニングですが、こうしたトレーニングを国別に行うこと自体めずらしいのです。米国は米国全体で、欧州は欧州全体で行いましたが、アジアでは日本と中国のみ国別のトレーニングを行いました。日本には高度で最先端な顧客が多いですからね。

(沙倉 芽生)