「Dynamics CRM Onlineは明確なメリットを提供できる」~米Microsoft

Dynamicsアジア地域担当ゼネラルマネージャに聞く


 マイクロソフト株式会社では、クラウド型のCRMサービス「Dynamics CRM Online」を11月25日に発表。日本でも快進撃を続けるsalesforce.comへの追撃態勢を着々と整えつつある。今回は、米Microsoft Dynamicsアジア地域担当ゼネラルマネージャのエイドリアン・ジョンストン氏に、Dynamics CRM投入後の戦略などについて話を聞いた。


――Dynamics CRM Onlineの国内提供がようやく発表になりましたが、CRMは、大変に強いベンダーが存在する分野です。日本の企業に対し、どういったアピールをしていかれるのでしょうか?

米Microsoft Dynamicsアジア地域担当ゼネラルマネージャのエイドリアン・ジョンストン氏
Outlookとのシームレスな連携を実現している

ジョンストン氏:いくつか言えることがあります。まず、お客さますべてがクラウド環境を望むわけではない、ということです。顧客に選択肢を与えることが重要なのです。

 もう1つ、(CRMシステムの)形態を変更しなくてはいけないこともあるでしょう。オンプレミスで運営していてもクラウドへ行く必要が出てきた、という場合に、もう一度構築をするのは大変なことです。Dynamics CRMでは、オンプレミスからクラウドへ、シームレスに変更することが可能です。これが、シンプルな差別化要因ですね。

 また、多くの人が当社のOutlookを使っていますが、CRMのアプリケーションとメールクライアントとを統合し、大きなメリットを出せる。これも、強調できることでしょう。

 これ以外では、TCOを含めたコストも、とても低い。(Officeとの親和性などのために)ユーザートレーニングが少なくて済みますし、一月ごとのコストを見ても低いのです。これは、とても説得力があります。

 このような理由から、Dynamics CRM Onlineはとても楽しみな製品です。


――市場での受け入れられ方をどう見ていますか?
58のパートナーが対応を表明している
Dynamics CRM Online 日本語版の画面イメージ(画面はベータ版)

 現在はベータ版が提供されていますが、150の組織がサインアップしてくれていますし、日本でも58のパートナーがサポートする、ということが発表されています。予測を超えて、グローバルに興味が高まっていますね。

 アジアは多様な市場ですが、まずは、7つの国で展開します。日本や香港、豪州といった成熟した国では、受け入れていこうという姿勢が見られていますし、未成熟な国でも進んできている。ちなみに7つの国とは、ほかにニュージーランド、シンガポール、マレーシア、インドになります。

 また、アジアの中では日本が、もっともオンラインが伸びていくだろうと見ています。CRMの市場が大きいですし、アジアで最大の市場である、というのがその理由です。また、新しい技術の採用スピードも速いですから、今後3年でトップシェアを目指していきたいと思っています。

 当社側でも、ほかのソリューションと比べた場合に、2つほどメリットが提示できるのです。その1つは、ホスティングパートナーがたくさんいることです。ホストのオフショアを望まない、日本でホスティングをしたいという企業に対して、選択肢を提供できます。また、グローバルな景気後退の影響で、コストにより注目している企業も多くありますが、TCOについて、説得力のある提示ができます。


――ただ、これまでオンプレミス向けのライセンス販売などを手掛けてきたパートナーは、ビジネス形態の変更を余儀なくされます。パートナー戦略については、どうお考えですか?

 Dynamicsでは、オンプレミスとクラウドを扱っています。1つのオプションとしてクラウドを勧め、その上でパートナーのオンプレミスも紹介するわけです。対立することはありません。

 パートナー側でも、クラウドがどこでも取り上げるようになった現在では、DynamicsにはCRM Onlineもあるよ、ということは紹介しないわけにはいかないでしょう。言わなくても、別のパートナーがお客さまのところへきてしまうだけですからね。

 しかし、クラウドになったとしても、多かれ少なかれアプリケーションのカスタム化は必要でしょう。導入というのはビジネスの2割の話で、残りの8割は設定など、システムインテグレーションの部分ですから、ビジネスは残ります。ですから、(パートナーのビジネスと)競合する、ということはありません。

 当社としても、トレーニングなど、チャネルに対する投資を行っています。この中には、Dynamics CRM Onlineのトラックを設けていますし、常に新しいパートナーを抱え込む努力もしている。実際に、競合ベンダーのパートナーが当社に乗り換えていて、これはアジアのほかの国でもそうです。

 別の側面では、1万社にもおよぶ、BPOSのパートナーとの協業もあるでしょうし、Windows Azureのパートナーが、Dynamics CRM Onlineのパートナーにもなり得るでしょう。

 私見ですが、3年から5年が経過すると、30%のパートナーは、クラウドビジネスだけを展開し、そのほかはオンプレミスと両方を手掛ける、といった状況になるのではないかと見ています。オンプレミスだけのところも残るのかもしれませんが、それは厳しい状況になるのではないでしょうか。競争力をつけたいのであれば、クラウドを手掛けない、ということはできないと思っています。


――話は変わりますが、Dynamics CRMでは、単なる顧客管理にとどまらないXRMという考え方を提唱しています。この利用法は、広まりつつあるのでしょうか?

 はい、日本市場では大きな要件になっています。もともと、この分野ではパッケージアプリケーションではなく、個別に作り上げるカスタムアプリケーションが主流ですが、Dynamics CRMを使うことで、迅速に作成できるようになるのです。アプリケーションをゼロから作るのではなく、Dynamics CRMを用いると、今、50%あるものの上に作り上げられるのですね。

 また、開発者のコミュニティは、当社とSalesforceでは比べものになりませんし、Dynamics CRM Onlineによるホスティングも可能なわけです。58のパートナーがある、ということを申し上げましたが、この中には、XRMの作業を始めているところがあります。インテグレーションサービスの提供だけでなく、その上にサービスを載せることができるわけですから、パートナーにとっても、これは商機なのです。


――最後に、Dynamics全体の話をお聞きします。Dynamicsには、CRM以外にERP製品も存在しますが、マイクロソフトでは双方を絡めたメッセージの発信をしていないように思います。この点はいかがでしょう?

 それは違います。発表はERP、CRMといった個別の発表になっていますが、市場に対しては業種ごとにやっているんですよ。確かに、自分が入社した2年前までは、プロダクトごとのメッセージになっていましたが、アジアの戦略として、業界ごとにメッセージを考え、訴求しているのです。

 例えば日本ではハイテク分野が挙げられますね。また、近々、リテール向けのものもローンチする予定になっています。

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