Oracle Cloudに5つの新PaaSなどを追加、ラインアップを大幅に拡充

Oracle Open World基調講演レポート


 Oracle Open World San Francisco 2012の会期3日目となる10月2日午前8時(米国時間)から行われた基調講演で、米Oracleの製品開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのトーマス・クリアン氏が、同社のクラウド・コンピューティング戦略についてあらためて説明を行った。

 

Oracle Cloudの意義は?

 初日に行われたラリー・エリソンCEOの基調講演では、Oracle Cloudにおいて、これまでのSaaS、PaaSに加え、新たにIaaSを追加することや、Oracle Private Cloudを開始することを発表していた。

 クリアン氏は、「Oracle Cloudのミッションは、データベースをはじめとするOracleが持つ最新のエンタープライズ技術を、インターネットブラウザを介して、いかなるパートナー、いかなる顧客に対しても提供することにある。Oracle Cloudは、ExadataおよびExalogicに基づく共通のインフラサービスの上に、プラットフォームサービス(PaaS)、アプリケーションサービス(SaaS)、そしてソーシャルサービスを提供する。これらはいまオンプレミスで利用しているものと同じである」と、全体的な概要から説明をはじめた。


Oracle Cloudは、共通インフラの上に3つのサービスで構成する米Oracleの製品開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのトーマス・クリアン氏

 

5つのプラットフォームサービスを発表

 プラットフォームサービスでは、Database Service、Java Serviceのほか、開発者がアプリケーションを開発する際に共通に利用できるDeveloper Service、iOSおよびAndroidを搭載したタブレットやスマートフォンをサポートするMobile Serviceを提供。また、Collaboration Service、Analytics Service、Application Storeを用意している。

 Database Serviceでは、Oracle Database 12g Release2をブラウザ経由でアクセスし、APEXやSQL、PL/SQL、Javaなどを活用してプログラミングができる環境を提供する。

 Java Serviceでは、WebLogicの環境を提供。同サービスを通じて、JDeveloper、Eclipse、NetBeansなどにより、J2EEアプリケーションとして動作させるようし、Oracle Enterprise Managerの環境が提供されていることから、これらをユーザー自身で管理することが可能になるという。

 また、クリアン氏は5つの新たなプラットフォームサービスを提供するとし、柔軟なオブジェクトストレージの利用が可能になる「Storage Service」、ソースコントロールシステムを活用して、クラウド上での開発が可能な「Developer Service」、さらには、アプリケーション間データ通信が可能なインフラを構築できる「Messaging Service」については、展示会場で実際にデモンストレーションを行うと述べた。


プラットフォームサービスの概要プラットフォームサービスでは3つの新サービスを展示

 さらに、複数の開発者同士がドキュメントを共有するといった場合に、ドロップボックスのような形で利用できる「Collaboration Service」と、ビジネスインテリジェンスを提供する「Analytics Service」については、今年末までにサービスを提供できるとした。

 ここでは、モバイルアプリケーションの構築における、JDeveloperによるJava Serviceの活用や、クラウドへ展開し、管理するといったデモンストレーションが行われたほか、シーメンスなどのユーザー事例がビデオで紹介された。

 この基調講演では、各サービス内容のデモンストレーションと、ビデオによるユーザー事例の紹介を繰り返すことによって、聴講者の理解を深めるといった手法をとっていたのが特徴的だった。


さらに2つのサービスを年内に提供するという

 

スイートで広範なソフトを提供するアプリケーション戦略

 続いて、クリアン氏は、アプリケーションサービスに関する説明を行った。

 ここでは3つのことを覚えてほしいと切り出した。

 「Oracleが提供するSaaSは、スイートの形で広範なソフトウェアを提供しようと考えている。これはユーザーが分散した形でデータを持ち、ビジネスプロセスが分散することを回避することにつながる。ERP、CRM、HRなどをひとつのクラウドで提供するのがOracleのSaaSである。2つ目には、アプリケーションのすべてをベスト・オブ・ブリードでそろえていることだ。機能性が優れたものであるというだけでなく、モバイル性、ソーシャル性を備え、BIも提供できる。そして3つ目には、アプリケーションのカスタマイズやコンソリデーションが可能になるという柔軟性を持っている点だ」。

 あわせて、アプリケーションサービスにおいて、財務管理やプロジェクト管理、在庫管理、ガバナンスやコンプライアンス管理、営業・マーケティング、人材管理、顧客サポートなどの一連のアプリケーションが用意されていることを示した。

 また、ここでは、Oracle Hyperion Planningを活用した「Financial Planning & Budgeting Service」が一部大手企業で利用されており、今後正式に提供すること、経営レポートや企業の財務諸表などの作成が行える「Financial Reporting」の提供を開始すること、さらに、「Human Capital Management」が11カ国で利用できるグローバル対応を図っていること、効率的なリクルーティング活動が行える「Talent Management」の導入成果などについても紹介した。

 一方、新たな取り組みとして、ソーシャルサービスについても言及した。

 クリアン氏は、「現時点で、Social Engagement&Monitoring、Social Network、Social Marketingの3つが利用できるようになっているが、それに加えて、新たなサービスを2つ提供する。ひとつは、ソーシャルメディアから得られた情報をもとに、ユーザーの状況を分析することができるSocial Data&Insight、もうひとつは、クールな画面を作るツールとして開発者のために提供するSocial Sitesを用意している」とした。

 続けて「Oracleのソーシャルのアーキテクチャがどうなっているのかという疑問に対して、cloud.oracle.comを通じて今週後半から1カ月無料で各サービスを提供する」とした。


ソーシャルサービスの概要新たに2つのサービスを提供開始すると発表

 

Oracle Cloudは最も包括的なクラウドサービスになる

 一連のサービスを紹介したあと、クリアン氏は、「これらのサービスは、すべてOracle Exadata上で動作し、OracleのVMの上で稼働する。また、ひとつひとつの環境はプライベートなバーチャルコンテナのなかに入り、ソーシャル、アプリケーション、プラットフォームに至るまで、すべてがOracle Enterprise Managementによって管理される。このクラウドサービスは全世界のデータセンターを活用し、どんな地域のユーザーにも提供できるものになる」などとアピールした。

 講演の最後にクリアン氏は、「あらためてOracle Cloudの目的を明確にしたい」とし、「Oracle Cloudは、Oracleのデータベース、ミドルウェア、アプリケーションをインターネット経由でSaaSとして提供するものであり、オンプレミスで使用しているものと同じく、オープンな製品、オープンなソリューションをそのまま利用できる。ユーザーが持つ独自のデータセンターや独自のプライベートクラウドで走っているものと同じ環境でパブリッククラウドとして活用できるようになっている。クラウドサービスでは、最も包括的なサービスになるといえるだろう。今後も、Oracle Cloudに新規製品やサービスを追加していく考えである。まずは、無料提供サービスを活用して、これらのサービスを試してほしい」と呼びかけた。


Oracle Cloudのインフラストラクチャ全世界のデータセンターを活用してサービスを提供する

 また、この基調講演では、米EMCのジョセフ・トゥッチ会長兼CEOが登壇。「EMCとOracleは、17年間にわたるパートナーシップを結んでいる。両社は、クラウドコンピューティングとビッグデータにフォーカスしているという点で共通している。VMwareをあわせた3社により、信頼性の高いクラウド環境を提供している」と語ったほか、「クラウド時代において、リアルタイムでのアナリティクスがキラーアプリケーションになる。コンピューティングコストの削減もクラウドの大きな特徴だといえる。クラウドの第1ステップはインフラの標準化、第2ステップは仮想化であり、この動きは2009年を境に大きく拡大している。そして第3のステップは自動化である。これが重要なステップである」などと話す。

 さらに、「今後はSoftware Defined DataCenterが主流になる。サーバーの仮想化に続き、ストレージ、ネットワークの仮想化が進展。自動化、セキュリティといったソフトウェアをビルトインした仕組みにより、データセンターが高度にマネジメントされるといった世界がやってくる。EMCでは、Software Defined DataCenter Readyの製品を準備している」と述べていた。


米EMCのジョセフ・トゥッチ会長兼CEO
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