仮想化道場

Xen上にコンパクトな実行環境を作るクラウドOS「Mirage OS」

Linux Foundationに移管されたXen

 なお、Mirage OSのベースといえるXenは、CitrixからLinux Foundationに移管される少し前から、開発のペースがスローになっていた。

 しかしLinux Foundationに移管され、大幅に体制が変わったことで、6カ月ごとに新バージョンをリリースすると発表。当初予定よりも2カ月遅れながらも、2014年3月にはXen 4.4がリリースされた。

 Xen 4.4では、テストコードを大量に用意してテストしたことで、セキュアで信頼性が高まったとしている。

 新しい機能としてはlibvirtをサポートし、OpenStackやCloudStackからのコントロールが可能になった。さらに、ARMプロセッサを正式サポートした(以前からXenではARMプロセッサがサポートされていたが、信頼性に欠けていた)。

 このほか実験的サポートとして、新しい準仮想化ハードウェア(PVH)、デスクトップ仮想化技術SPICEサポートの改善、ゲストOSのEFIブート、IntelのHaswell世代のプロセッサで採用されたVMCS(Virtual Machine Control Data Structure) Shadowing機能を利用するハイパーバイザ―の多重階層化(ネステッド)機能などが用意されている。

Xen 4.4は3月にリリースされた。新機能を数多く取り入れるよりも、安定性にフォーカスされている
Xen 4.4では、PVH(Par Virtualization Hardware)がサポートされた。PVHは、プロセッサの仮想化支援機能を前提とすることで、仮想マシンの性能をアップしている
今後Xenでは、Automotive分野への対応、仮想化CPU(XenGT)のサポート、ARMサポートの充実、CloudStackとOpenStackなどクラウド構築ソフトウェアとの連携性の向上などが予定されている

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 Mirage OSなどのクラウドOSは、今後大きな注目を集めていくだろう。フルファンクションが必要ないアプリケーションなどは、クラウドOSを利用することで高いパフォーマンスを示していくだろう。また、AWSなどの環境とも互換性を持っているため、手元のPCで開発し、ある程度のテストをすれば、実行環境としてAWSなどのXenベースのパブリッククラウドを利用するということも考えられる。

 もう一つは、ARMプロセッサなどを使った組み込み機器への利用だろう。組み込み機器にXenなどハイパーバイザ―を利用するということは今まで考えられていなかった。しかしARMプロセッサが64ビット化し、ある程度のパフォーマンスを出せるようになれば、さまざまなアプリケーションを動かせる、もう少し複雑な機能を持つシステムを作りたくなる。

 こういった時にMirage OSを使い、個々のアプリケーションをアプライアンス化して切り離し、それを仮想ネットワークで接続して一つのシステムを作り上げるというコンセプトも出てくるだろう。このようにすれば、個々の機能ごとにデバッグも行いやすいし、アプリケーションのバージョンアップも簡単に行えるようになる。

 クラウドOSの将来に期待したい。

山本 雅史