仮想化道場

HPCからクラウド、ビッグデータへと市場を広げていくDataDirect Networks

SFAとWOS、2つのラインアップを用意

 HPCで多く利用されているストレージシリーズのSFAでは、ストレージを並列処理に特化することで、ストレージ容量とともにI/Oスループットを飛躍的に向上させている。SFA12KXシリーズ(ブロックストレージ)は、EB(エクサバイト)をも視野に入れたストレージとなっている。

 SFAは、記憶媒体として、コントローラが持つDRAMのキャッシュメモリ、フラッシュメモリ(SSD)、SAS/SATA HDDを効率的に利用することで、ストレージの性能を総合的に向上させているという。I/Oインターフェイスとしては、標準的なFC(ファイバチャネル)と合わせて、HPCクラスタではよく用いられる、高速・低遅延なFDR InfiniBandも採用されている。

 当初は、HPC向けの特殊なストレージと思われていたDDNの製品だが、クラウドの普及、ビッグデータの一般化により、徐々に企業へと広がり始めている。

 「現在では、クラウドの普及やビッグデータといった部分で、DDNのストレージを採用する企業が多くなっています。例えば、PayPal、写真などのイメージを販売しているGetty Images、映画会社のUniversalやWarner Bros、放送局などにも採用されています」(レクター氏)。

 PayPalやGetty Imagesなどでは、大量のデータに高速でアクセスして遅延なく処理できるという、HPC特有の機能がビジネス分野に生かされている。また、映画会社や放送局などでは、大量の映像ファイルにアクセスしたり、映画などの編集作業中ファイルや作品の一元的な管理を行ったりするために、DDNのストレージを採用している。

 このように、DDNがHPC分野で研究してきた高いアクセス性能、スケーラブルにストレージ容量を拡張可能な点が、エンタープライズをはじめとする一般企業でも重要視されてきているのだ。

 HPCのストレージとしては、Lustre(DDN ExaScaler)あるいはGPFS(DDN GRIDScaler)という並列ファイルシステムが一般的に採用されているが、企業で利用していくためには、NFSやCIFSへの対応が必要になってくる。このためDDNでは、NFSやCIFSをサポートするためのゲートウェイ製品を提供している。

DDNでは、SFAとWOSの2種類のラインアップを用意している。SFAは、ブロックストレージやHPC向けのファイルシステムLusterをサポート。WOSはオブジェクトストレージだ
DDNの製品ポートフォリオ
SFAのソフトウェアスタック。ストレージの性能をアップするために、SFA用に特化したOSとミドルウェアが採用されている
SFAには、ストレージキャッシュ、リアルタイムでマルチCPU対応のRAIDシステム、リアルタイムのキャッシュマネジメントなどが搭載されている

 さらに、こうしたHPC向けのファイルシステムのみならず、Web Object Scaler(WOS)という、全く新しい、クラウド向けのオブジェクトストレージ製品もリリースされている。

 「DDNでは、ビッグデータの分野で新しいテクノロジーを考えています。Hadoopのように分散されたサーバーで処理を行います。またDDNでは、SFAストレージプラットフォームのプロセッサ側でビッグデータに関するある程度の処理を行えるようにしたいと思っています」。

 「日本国内でもHPC関連の学会やカンファレンスに参加していますが、参加者が変わり始めています。以前は、大学や政府系研究機関などHPCという特定の分野から出席者が多かったですが、最近ではビッグデータなどを扱う企業からの参加者も増えています。これは、HPCで必要とされてきたテクノロジーの多くがビッグデータの処理でも有効で、かつ非常に重要だということです。HPCでは、すでにペタスケールやエクサスケールのビッグデータを扱うようになっています。また、HPCならではの超高速なI/O性能も重視されています」(以上、トリンドル氏)。

WOSのソフトウェアスタック
スケーラブルにストレージを拡張できるようなアーキテクチャを採用する
オブジェクトストレージのWOSは、クラウドストレージや他社のストレージシステムに比べて、圧倒的なコストメリットがあるという

(山本 雅史)