仮想化道場

ワークロードに最適化されたComputeを提供、ProLiant Gen9の1Uモデル「DL360」を試す

 昨年10月に発表されたHaswellベースのXeon E5 v3プロセッサを搭載した、日本HPのProLiant Gen9シリーズは、一般に言われているサーバーというよりも、今後のIT環境にマッチしたCompute特化型サーバーになっている。

 今回は、同社からProLiant DL360 Gen9をお借りできたので、さまざまなベンチマークなどを行い、ProLiant Gen9シリーズの特徴を解説していく。

25周年を迎えたHP ProLiantシリーズは、18年以上、x86サーバーのトップベンダーとして君臨していた。これからの25年もトップランナーであるために、さまざまなテクノロジーを投入していくという

Computeに注目したProLiant Gen9シリーズ

 ProLiantは、1つ前のGen8から自働化サーバーを目指して開発されるようになっていた。特に、OSセットアップを容易に行える点や、サーバー内部に用意された大量のセンサーにより、稼働中のシステムのトラブルをプレアクティブに検知できる点、クラウドを利用したハードウェア監視システムを導入していた点など、今までに無いサーバーとなっていた。

 さらにGen9では、IT環境がSoftware Defined DataCenter(SDDC)、Software Defined Cloud(SDC)に変化しつつある現状を踏まえて、「ワークロード特化型サーバー」というコンセプトを打ち出した。

ProLiant Gen9では、ワークロードの最適化されたCompute能力を提供するために開発されたサーバーだ
Software Defied化するデータセンターにおいて、各レイヤにおいて最も適したCompute能力を提供するProLiantシリーズ

 現在のIT環境は、オンプレミス環境でも仮想化が当たり前になり、TCO(Total Cost Ownership:総所有コスト)を低下させるため、オンプレミスで動作していた複数のサーバーを、高い性能を持つ新世代のサーバーに集約することが当たり前になってきた。

 さらに、プライベートクラウドの構築、パブリッククラウドの利用などにより、オンプレミスとクラウドを自由に行き来するハイブリッド環境で利用されるようになってきている。

 ProLiant Gen8が発表された当時(2012年)は、クラウド構築ソフトのOpenStack、ビッグデータのHadoop、インメモリデータベースのSAP HANA、Software Defined Network(SDN)やSoftware Defined Storage(SDS)などの新しいテクノロジーは生まれたばかりで(もしくは、まだ影も形もなかった)、IT環境の主流になっていくかどうか分からなかった。しかし、ProLiant Gen9がリリースされた2014年には、今後のデータセンターの方向性が見えてきた。

 そこでHPでは、サーバーの用途を大きく4つのワークロードに分けて整理した。1つは、今までと同じく汎用のビジネスアプリケーションを動かすワークロード。このワークロードに対応したサーバーは、今までのサーバーと同じく1Uや2U、大容量ストレージを誇る5Uなどが用意された。これらのサーバーは、今までと同じ用途で利用される。

 ただし今までの1Uサーバーには、高性能なプロセッサ、大容量メモリを搭載した製品はなかった。しかしProLiant Gen9からは、Compute(プロセッサ、メモリ)性能が高い1Uサーバーが用意されている。ネットワークは専用モジュールにより10Gigabit Ethernet(GbE)を搭載できるほか、2.5インチドライブを10台搭載できるなど、今までの2Uサーバーと同じようなスペックとなっている。

 2つめは、仮想化、クラウド環境などのワークロードに特化したサーバーだ。膨大な数のComputeを用意してサービスを提供する仮想環境、クラウド環境においては、ラックに収まるサーバーの密度(数)をどれだけ上げられるかが重要になる。このため、仮想化、クラウド環境向けとしては、ブレードサーバーのBLシリーズがマッチする。

 特にGen9のBLシリーズは、ネットワークモジュールにFlexFabric 650/Mを採用している。FlexFabric 650/Mは、1つのアダプタで2ポートの20GbEをサポートし、LAN、SAN、RDMAに対応している。さらに、仮想ネットワークのVXLAN、NVGREをネットワークモジュール側でサポートすることで、CPUの負荷を最大46%削減した。ストレージI/Oに対しても、12Gbps SASに対応することでパフォーマンスを引き上げている。

 3つめは、HPCやWebスケールアウトのワークロードに向けたサーバーだ。この用途に向けては、HP Apolloが使用される。Computeモジュールとしては、2ソケットサーバーを1トレイに2台搭載できるようにしたXL730f Gen9、Applo6000シリーズに向けたXL230a Gen9が用意された。特にXL730 Gen9が搭載できるApollo 8000シリーズは、常温水冷式サーバーとして、今までのサーバーでは実現できなかった高密度実装(専用ラックに144台のサーバーを収納)を実現している。

 4つめは、HP Integrity、Nonstopなどの、ミッションクリティカル分野に向けたサーバーだ。

 HPでは、ProLiant Gen9では、このようにワークロード別のサーバーというコンセプトを打ち出してきた。特にProLiant Gen9では、Xeon E5 v3世代プロセッサを搭載することで、今までよりも多数のCPUコア、大容量のメモリを搭載するCompute特化のサーバーができあがった。もしかすると、今後はSDN、SDSに特化したサーバーがリリースされてくるかもしれない。

HPが定義する4つのワークロード
ProLiant Gen9は、ワークロード特化型サーバー。Gen8の自働化もさらに推し進めている
ProLiant Gen9では、ラック、タワー、ブレード、Apolloなど、すべてのシリーズが新世代に更新された

(山本 雅史)