仮想化道場

“やわらかいデータセンター”を作る、IntelのSoftware Defined Infrastructure (Rack Scale Architectureによりサーバーを再設計)

Rack Scale Architectureによりサーバーを再設計

 ITシステムを構成するサーバー、ネットワーク、ストレージなどのハードウェアは、SDIの流れに従って、ダイナミックに再構成ができるものへと変わってきている。しかし、現状のハードウェアでは、レガシーアーキテクチャを引きずっている。

 例えば、一般的なサーバーにおいては、1台の筐体に多数のプロセッサ、メモリを搭載するような設計にはなっていない。さらに、ネットワークなどのI/Oに関しては、それぞれのサーバーごとに接続されている。このため、I/Oの一括的な管理も行いにくい(リソースを抽象化したSDNにより一括管理はできるが、物理層での管理はサーバーごとになる)。

 そこで、Intelでは、Rack Scale Architecture(RSA)という概念を提供した。プロセッサやメモリなどのコンピュートと、ネットワーク、ストレージに関して、リファレンスデザインをIntelが提供し、多くのデータセンターやクラウド事業者に採用してもらおうというものだ。

RSAでは、ラックにおけるサーバー、ストレージ、ネットワークをよりフレキシブルに構成できるようにする。将来的には、ファブリックによりすべてのモジュールが接続され、プール化できるようになる
RSAは、ラック全体で消費電力を下げ、高密度化によりパフォーマンスをアップする

 コンピュート部分に関しては、米HPが発表したMoonshot、米AMDの子会社となったSeaMicroなどの高密度サーバーと、同じコンセプトでデザインされている。

 コンピュートのラックは、XeonもしくはAtomプロセッサとメモリ、ネットワークなどを搭載したプロセッサカードを複数搭載する。

 Intelでは、RSAのコンピュートに使用するプロセッサとしては、SoC(System on Chip)により、周辺インターフェイス(特にネットワーク)を統合し、1チップ化されているものを使用する予定だ。

 現在提供されているHPのMoonshotでは、個々のプロセッサカードにストレージが搭載され、ここからOSのブートが行われる。一方でRSAのコンピュートは、SSDなどの、OSをブートするだけのストレージを搭載するか、プロセッサカードにはストレージを搭載せずに、ネットワークからすべてのプロセッサカードをブートするかを選択できるという。

発表会で公開されたRSAのサーバー。モジュール化されたXeonが6つ搭載されている。サーバー内部にスイッチが搭載されており、ラックにOpen Network Platformのネットワークスイッチが用意され、サーバーとストレージは、100Gbpsの光ケーブルで接続される(Intelの発表会Webキャストより)
Atomプロセッサを使用したRSAのサーバー。Xeonのユニット部分に5つのAtomサーバーユニットが搭載され、全体で30個のAtomサーバーユニットが搭載されている
Atom C2000シリーズを使用したRSAサーバーのプロセッサユニットのモックアップ

 コンピュートの筐体には、プロセッサカードを接続できるネットワークスイッチが搭載されている。ラックに設置されている筐体間の通信には、Ethernetではなく、Intelが開発した光通信用の半導体チップ「シリコン・フォトニクス」を使用する。

 シリコン・フォトニクスを利用することで、細い光ケーブル1本で最大100Gbpsのネットワークが構築できる。Intelが開発したシリコン・フォトニクスチップは、従来の光インターフェイスチップに比べると低コストで利用できるという。

 さらにプロセッサの世代が進めば、SoCの中にシリコン・フォトニクスチップを取り込み、光通信自体をファブリックとして利用できるようにする計画だ。

Intelでは、データセンターのラック内部の通信にシリコン フォトニクスを利用する
光通信ケーブルにより、ラックの背面に這うケーブル本数が光ケーブル1本に変わる。これにより、コンフィグレーションの変更が、容易になる

ネットワークのリファレンスデザインONP Switchを提供

 なおネットワークに関しては、IntelはOpen Network Platform(ONP) Switchというリファレンスデザインを提供している。ONP Switchは、Xeon E5-2600と、Cave Creekというネットワークに特化したチップセット、48ポートの10GbEと4ポートの40GbEをサポートするスイッチチップ(Intel FM6764)を使用したネットワーク スイッチだ。

 ONP Switchは、プロセッサを搭載しているため、SDNが簡単に構築できる。Intelが開発したリファレンスデザインでは、同社が買収した米Wind Riverのソフトウェアスタックを使用して、SDNを実現している。

 さらに、Linuxのハイパーバイザー(KVM)を搭載することで、ロードバランシング、アプリケーションアクセラレータなど、さまざまなネットワークサービスを仮想化してスイッチ上で動かすことができる。

 もちろん、ONP Switchは、IAアーキテクチャのプロセッサを使用しているため、プロセッサの世代が変わり、性能がアップすれば、さらに多くのネットワークサービスを動かすことが可能になる。

 Intelでは、プロセッサのパフォーマンスが上がると、スイッチを構成する専用チップをIAプロセッサで置き換えることができるとしている。IAプロセッサを使うことで、専用チップを使ってハードウェア化していたさまざまなネットワークの機能をソフトウェア化することができるようになる。Intelでは、スイッチなどのデータ処理を行うためのSDK(Intel DataPlane Kit)も提供している。

Intelが開発したONP Switchのリファレンスモデル。Xeonプロセッサに、ネットワーク向けのアクセラレーションチップとスイッチチップなどにより構成されている。IAプロセッサにより制御されるため、ソフトウェアにより新たな機能を追加しやすい
ONP Switchのブロック図。IAプロセッサにはXeonが、アクセラレーションチップとしてCave Creekが利用されている。FM6764は、Intelが開発したスイッチチップ
ONP Switchは、Wind Riverなどのソフトウェアを利用して、仮想マシン上にロードバランシングやSDNなどを搭載できる。いわば、ソフトウェアによってさまざまな機能が追加できるネットワークスイッチとなる
ネットワークもIAプロセッサによりソフトウェア化することで、複雑な機能をソフトウェアで構成できるため、コンフィグレーションの変更も今まで数週間かかっていたものが、数分で終了するようになる

(山本 雅史)