大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

Blu-rayのB2B市場展開は成功するか? パナソニックがアーカイブ用途に提案する狙い (HDDやテープにはないメリットとは?)

HDDやテープにはないメリットとは?

 パナソニック AVCネットワークス社 ストレージシステム事業推進室 事業統括の田井康裕氏は、「2020年には年間9ZB(ゼタバイト)のデータが生成されるといわれているが、そのうち半分の4.5ZBが、変更がなく、再生される頻度が少ないアーカイブデータだといわれている」と前置きし、「この分野ではHDDやテープが利用されているものの、保存コストが消費電力が大きい、データロストが発生するといった問題がある。こうした課題を解決することができるのがBlu-rayディスク」だと語る。

 Blu-rayディスクによるアーカイブのメリットとして、田井氏は3つの観点から説明する。

 ひとつはストレージそのものにかかわるコストを削減できる点だ。

 「HDDの場合には3~5年が寿命であり、テープ装置でも7~10年の寿命。そのたびに新たな装置が必要になる。Blu-rayディスクの寿命は50年以上であり、長期保存には適している。また、過去の世代に渡り再生互換性を維持している点もストレージコストの削減に寄与する」と語る。

 2つめは消費電力を削減できる点だ。

 Blu-rayディスクの場合には、メディア保存条件が、温度で30度~マイナス10度、湿度で20~70%と幅広く、テープやHDDに比べて、空調にかかわる電力を大幅に削減できる。また、再生装置の電力も稼働時で約130W、待機電力で約7Wと少なくて済む。ディスクだけを別途保存すれば消費電力は不要だ。

 「Blu-rayディスクは、温度や光、湿度の影響を受けにくく、経年変化に強いため、室温保管することが可能。保管時の空調電力コストを大幅に削減できる」とする。

 そして、3つめには安全にデータを保存できるという点だ。

 「テープは接触型であるために摩耗が発生。HDDは少ないギャップで読み取るためヘッドクラッシュの危険性が伴う。それに対して、Blu-rayディスクのヘッドは非接触であり信頼性が高い」と田井氏は語る。

 さらに、RAID 5およびRAID 6により、データの信頼性を向上させることも可能であるほか、1回記録のBD-Rを利用することで、誤消去を防止。不正アクセスからの改ざんも防止できる。そのほか、「米ルイジアナ州の大型台風被害や、東日本大震災の際にも、水没したディスクのデータ再生において、高い復旧率を誇っており、水害にも強いことを証明している」とする。

 「長期耐久性、省電力、安全・安心、低ランニングコストというメリットを持ち、データの長期保存には適している」と、田井氏は繰り返す。

パナソニック AVCネットワークス社 ストレージシステム事業推進室 事業統括の田井康裕氏
アーカイブデバイス(HDD、テープ、光ディスク)の比較

(大河原 克行)