大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

HCIはひとつのステップにすぎない――、Nutanixが目指すエンタープライズクラウド戦略

ソフトウェアが最大の差別化ポイント

――最近、Nutanixは、「ソフトウェア企業である」という発言をしていますね。HCIという「箱」を製品化している企業である印象からは違和感を覚えましたが。

スミス氏:
 ハードウェアベンダーであるLenovoやDellが、Nutanixの技術を活用したHCIを投入するという場合には、ハードウェアの観点からも差別化ができるでしょうが、NutanixのHCIを構成しているサーバーやストレージといったハードウェアは汎用的なものです。そこで、われわれは差別化できません。

 ですから、われわれはソフトウェアのことしか語りません。ハードウェアのことを語るのは、ハードウェアベンダーの役割です。Nutanixの立場から見れば、差別化できるすべての機能はソフトウェア化されており、その機能をつかさどるのが、Acropolis Base Software(AOS)ということになり、機能を管理するツールがPrismとなります。

プラットフォームに依存しないNutanixのソフトウェアアーキテクチャ

 例えば、Nutanixでは分散ストレージ環境において、さまざまなインテリジェント機能を提供しています。ストレージのSnapshotや重複排除のようなエンタープライズストレージ機能のほか、仮想化で求められるレプリケーションやディザスタリカバリ(DR)、クラウドの連携まで実現できます。このような機能はすべてソフトウェアで提供されており、アップデートによって常に最新機能を利用することができます。

 HCIの導入は、インフラが欲しいからではありません。アプリを走らせ、ビジネスを行うために必要であるから導入するのです。そのためには、インフラ全体をシンプル化、ビジュアライズし、Infrastructure as Code においても簡素化していくことが必要です。

 2016年8月に買収したCalm.ioは、エンタープライズクラウド環境でDevOpsの自動化と管理機能の強化を実現するものです。アプリケーションとサービスのオーケストレーション、ランタイムのライフサイクル管理、ポリシーベースのガバナンス、包括的な報告および監査サービスを実現し、今後は、仮想マシン、コンテナ、マイクロサービスなど、あらゆるアプリケーション環境に対応していくことになります。

 つまり、ソフトウェアがNutanixの差別化のポイントであり、エンタープライズクラウドプラットフォームの実現において、ソフトウェアは大変重要な要素なのです。

 GoogleやAWSでは、多くのハードウェアを稼働させていますから、毎分のように、ハードウェアが必ずクラッシュしています。しかしソフトウェアによって、その障害はまったく感じずに運用されています。ハードウェアは、インプリした途端に劣化がはじまり、最終的には壊れてしまいますが、ソフトウェアはインプリしたあとに進化をしていきます。そして、ハードウェアの障害を補完するのがソフトウェアです。

 こうした考え方がないと、エンタープライズクラウドは実現しません。Nutanixは、そうした考え方をもとに製品を提供しています。だからこそ、ソフトウェアカンパニーなのです。

――将来的にはハードウェアの提供を止めることにつながるのですか。

スミス氏:
 その考えはまったくありません。Nutanixがハードウェアを提供し続けるのは、ユーザーに選択肢を提供するという狙いがあるからです。Nutanixから提供されるエンドトゥエンドの製品とサポートを活用したというニーズがある一方で、これまでLenovo製品を使っていたユーザーは、Lenovoを使い続けたいと思うはずです。また、Lenovoならではのハードウェアの特徴を選択理由にあげるユーザーもいるでしょう。

 ユーザーに選択肢を提案するという意味で、われわれもハードウェアを製品化し続けていきます。