大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

Dell EMC Worldで明らかになったDell Technologiesの“3つのポイント”

非公開企業であることが可能にするコンサンプションモデル

 2つめが、新たなコンサンプション(消費)モデルを発表した点だ。

 Dell EMC VxRailアプライアンスとDell EMC XCシリーズで利用できる「DFS(Dellファイナンシャルサービス) Cloud Flex for HCI」、Dell EMCのすべてのストレージソリューションで利用可能な「Flex on Demand」、そして、PCを利用した「PC as a Service」も用意することを明らかにした。

 いずれも、初期投資コストを不要とし、使用量に伴う月額払いを採用。さらに、時間の経過に伴う価格の引き下げも行う仕組みを導入する。

 「デスクトップからデータセンターまでを網羅した、柔軟なコンサンプションモデル。ここまで幅広い購入方法を提供している企業はない。業界をリードする決済ソリューションにより、業界の変化に柔軟に対応できる」(ゴールデン プレジント)とする。

 初めてHCIソリューションを導入する場合や、PCのリフレッシュを計画している場合、データセンター全体を近代化する場合など、それぞれの用途にあわせたコンサンプションモデルを用意。ビジネス要件の変化に対応してキャパシティを拡大したり、縮小したりといったことができるほか、大規模な初期投資コストなしで新しいテクノロジーを徐々に展開できるという。

新たなコンサンプションモデルが発表された

 実は、この仕組みは、非公開企業であるDellからこそできるものだとも位置づける。

 Dell EMC サービス&IT担当のハワード・エライアス プレジデントは、「ハードウェアを含めたサービスモデルは、ソフトウェアのサービスモデルとは異なり、投資の回収に時間がかかる。だが、投資家は、毎月多くの資金が入ってくることを望む。公開企業のままで、投資家の期待に沿うような投資を考えれば、このビジネスモデルには踏み出せない。非公開企業だからこそ、実現できる新たなサービスである」と語る。

 短期的な回収ではなく、10年単位の長期的視点で投資ができる点が、今回の新サービスの創出につながったと自信をみせる。

 ゴールデン プレジデントは、「支払い方法に関して悩んでいる顧客に対する新たな解決策を提案できる」としながら、「これは新たなビジネスモデルであり、顧客がどのようなスピードで導入するかどうかはわからない。想定される結果の範囲が広いため、Dellのビジネスにおいて、どの程度の構成比を占めるのかはまったく予想できない」とする。

 しかし、Dell エグゼクティブバイスプレジデント兼チーフマーケティングオフィサーのジェレミー・バートン氏は、「IDCによると、今後1年以内に40%の企業がPCをサービスとして購入することになると予測している」とし、PC as a Serviceでは、PCハードウェア、ソフトウェア、導入、管理、セキュリティ、サポートなどのエンド・トゥ・エンドのサービスを、常に最新の状態で利用できること、CAPEXをOPEXにできることや、テクノロジーの隠れたコストを洗い出し、コストの透明性が可能になることを強調。

 「PCのライフサイクル全体にわたって、IT管理の負担とコストを削減し、エンドユーザーに新しいテクノロジーを、迅速に、使いやすい価格帯で提供することができる」としている。

 Dell Technologiesにとって、未知の領域のサービスモデルともいえそうだが、そうしたところにも非公開企業である強みが発揮されている。これが多くの収益を生むのであれば、公開企業である競合他社が踏み出せない、いまのリードは決定的なものになりそうだ。

新たな競合とぶつかることに

 だが、この新たなサービスの創出は、Dell Technologiesにとって、新たな競合を生み出すことにつながるともいえる。

 ハイパースケールのクラウドプロバイダーや、パートナークラウドとの競合などを生むことになるからだ。

 Dell EMCのゴールデン プレジデントは、「AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft、IBMが、ある時にはパートナーであるが、時には競合にもなる。VMwareはAWSとのパートナーシップを発表し、VCFがAWSで動作することができるようになった。また、Microsoftとの新たな提携を発表し、Azure Stackを投入することを発表した。しかし、新たなサービスにおいては、競合する側面が出てくるかもしれない」とする。

 一方で、Dell Technologiesでは、ミッションクリティカル向けのクラウドサービスである「Virtustream」を強化する姿勢も示す。今回のDell EMC Worldでも、ミッションクリティカルのクラウド環境において、Virtustreamが強みを発揮できることを何度も強調。

 さらに、ミッションクリティカルアプリのオンプレミス環境においても、今後は、Enterprise Hybrid Cloud for Virtustreamを活用できるようにすることや、新たにVirtustream Health Careサービスを医療分野向けの基幹アプリとして提供を開始することなどを発表してみせた。

 「誰もがクラウドで利用することを考えなかった、ミッションクリティカルの領域に焦点を当てている。つまり、ここに踏み出すことで、すべてのアプリケーションを対象にしたハイブリッドクラウド戦略を持っている」とし、特定分野での強みを生かした展開を進める姿勢を示す。

 だが、「ここでいうクラウドとは場所のことを指すのではなく、運用モデルのことを指す」として、単に競合するだけではなく、協業するスタンスであることを付け加える余念の無さもみせる。