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Jobs氏の生前の言動が明らかに 10年ごしのiPod訴訟

Jobs氏の証言は裁判に有利か不利か

 Jobs氏のメールが法廷に持ち出されるのは初めてではない。今年4月に和解した電子書籍の価格を巡る集団訴訟、またGoogleら数社と結んでいたとされる互いの社員の引き抜きを控える合意疑惑でもJobs氏のメールは使われた。

 しかし、Jobs氏の発言の取り扱いには、難しい面がある。Jobs氏は業界を変革したイノベーションや経営の手腕が評価され、尊敬されている存在だ。これらの話は氏の逸話としては興味深いかもしれない。だが、著名なだけに、その人物像が訴訟で真実の判断を曇らせるおそれがある。

 Bloombergによると、Apple側はJabs氏の性格に関する証拠で陪審に印象を植え付けようとする原告側の戦術をとくに警戒しているという。これに対し判事は、Apple側がJobs氏を「ビジョナリー」と描かない限り、消費者側にも外部の証拠を持ち込ませないということで妥協した。判事は「Jobs氏の性格を問題の中に入れるのなら、出て行ってもらう」「ビジョナリーは良い人も悪い人の両方になり得る。あらゆるタイプが含まれる」と述べている。

 また、Jobs氏が患っていたガンについてもルールを設けた。Jobs氏の証言動画で、Jobs氏は医療休暇中であったことを陪審員に伝えるべきだとAppleは述べたという。Jobs氏が一部のことを「覚えていない」と述べたことが「ネガティブな印象を」与えかねないと案じたからだ。これに対し、原告側の弁護士は、Appleはガンを持ち出すことで陪審員の同情をもらおうとしていると反論した。そこで、判事はJobs氏は医療休暇中であり、Jobs氏はその後亡くなったことを知らせるが、ガンには言及しないということで事を収めたという。

 スタンフォード大ロースクールのMark Lemley教授はこう述べている。「Steve Jobsは難しいターゲットだ。Jobs氏は広く賞賛されており、その名誉を毀損(きそん)するようなことは原告側に逆風となりかねない」

 陪審員の選定時に、候補者は前もってJobs氏についてどのように思っているのかを尋ねられたという。ある候補者はJobs氏を「雇用を創出したイノベーター」と形容するとともに、「自分勝手な人物」と形容した。Appleは権利を行使して、この人物の陪審員からの除外を求めた。理由は明らかにしていない。

 Jobs氏が死去して3年あまり。なお、あちこちに影響を与え続けている。

岡田陽子=Infostand