Infostand海外ITトピックス

驚異のAR企業 5.4億ドルの出資を受けたMagic Leap

Magic Leapの技術を解き明かす

 MIT Technology Reviewに解説したスタンフォード大学のGordon Wetzstein氏によると、Magic Leapの特許は「ライトフィールド」(光照射野)という技術を利用して、光線パターンをつくり出し、3Dオブジェクトを見せるのだという。

 通常のヘッドマウントディスプレイは、2D(平面)の2つの画面で、両目に異なる画像を見せ、脳をだまして奥行きがあるように感じさせる。この場合、眼はすぐ前にある画面に焦点を合わせている。しかし、実際に人間が立体物を見るとき、実際には対象の部分ごとに焦点を変えて見ている。この見え方をMagic Leapは再現する。

 ライトフィールドは、オブジェクトに関する光線の色や明暗度、方向などすべての光線情報を取得して3次元空間情報データにする技術だ。2011年、シリコンバレーのLytroというベンチャーが同技術に基づくカメラを発表してライトフィールドも広く知られるようになった。異なる焦点を持つ多数のカメラ(マイクロレンズ)で同時に被写体を撮影し、得られたデータを再構築。出来上がった写真は、見たい部分にフォーカスを合わせて見ることができる。いきおいデータ量は大きくなる。

 Magic Leapは、「WRAP」(waveguide reflector array projector)と呼ぶディスプレイシステムの特許を出願している。構造的には、小さな鏡群の配列になっていて、光ファイバーから送られたライトフィールドの光が、距離情報も持った仮想オブジェクトの幻影を創り出す。鏡群は半透明で、ユーザーは目の前の現実世界の中に仮想オブジェクトを重ね合わせて見せることができる。

 この方式は、目がどこを見ているかに応じて見せる映像を切り替えるため、高度なモーションセンサーと目の動きをトラックする技術が必要だ。Magic Leapは、これらの特許も併せて出願している。

 また、CEOのRony Abovitz氏自身も特許を出願している。「Massive simultaneous remote digital presence world」(US20130125027 A1、同時多数のユーザーにデジタル的に存在する世界)は、サーバーと各ユーザーの端末がコミュニケートすることで、複数のユーザーに仮想オブジェクトを見せるというものだ。

 一つの仮想オブジェクトの周りに、大勢の(ヘッドマウントディスプレイを装着した)ユーザーが集まり、いろんな方向から立体的に見られる。つまり、Webサイトに掲載しているような空飛ぶクジラやイエローサブマリンを街に出現させることが可能になるのだ。

(行宮翔太=Infostand)