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PC事業とエンタープライズ事業へ、分社するHPの行方は

HP、HPEともに前年比マイナス成長

 分社化計画の発表を受け、HPの株価は4.9%上昇した。市場は歓迎したが、業界は楽観視してはいない。HPとHPEは売上高550億~600億ドルと同レベルだが、成長率は前年比でそれぞれ7.1%減、6.4%減とともに苦しい。

 それぞれを見ると、HPはPCのコモディティ化が進み、さらにはタブレットなどモバイルに押されて市場自体が成長市場ではなくなっている。ソニーの撤退や、Samsungの欧州市場からの撤退などの動きがこれを裏付けている。HPは3Dプリンターなど成長分野を挙げるが、これも成長を約束する要素とは言いがたい。

 GuardianはApotheker氏時代のPC1台当たりの営業利益と平均販売価格(ASP)を比較。当時は営業利益が36ドル、ASPが630ドルであったのに対し、現在は営業利益24ドル、ASP557ドルと悪化していることを指摘する。そして、2005年にLenovoにPC事業を売却したIBMの場合と同じで、今回の分社化は根本的には“PC事業を捨てること”だと分析した。

 では、Whitman氏が直接率いるHPEはどうだろう。成長が見込める分野とはいえ、競争も激しい。こちらも、先にIBMからのx86サーバー事業買収を完了させたばかりのLenovo、Dellなどのハードウェアベンダーがおり、ソフトウェアでは提携関係にもあるOracle、IBMなどがいる。新しい市場であるクラウドでは各社とも1~2歩先を読みながら動いており、激動が予想される。HPが推す「OpenStack」は多くのライバルがフォーカスするクラウド基盤であり、協力しながら差別化をどう図るのかが不明確だ。

 The Economistは、これに加え、HPが契約するホワイトボックスベンダーが直接HP顧客に販売するという動き、クラウド化でHPブランドを好む潜在顧客がサーバーを調達しなくなっていること、なども指摘する。

 PC Worldは、HPEにフォーカスしてアナリストの声を拾った。そのうち、Forrester Researchのアナリスト、Glenn O'Donnell氏は、HPが注力しているソフトウェアについて「何年もの間、好材料と悪い材料があるが、最大の問題は実行力」とコメントしている。また451 Researchのアナリストは「OSレベルからより高位のレベルのプラットフォームに移行する必要がある」と、アプリケーション分野の強化を進める必要性を強調する。Wall Street Journalは、ハードウェアとソフトウェアを統合した垂直統合型システム(コンバージドシステム)にチャンスがあるとするGartnerのアナリストの見方を紹介する。

 こうした状況の下、HPEが買収戦略をとると考える業界関係者もあり、VMware、EMCなどの名前が早くも挙がっている。

(岡田陽子=Infostand)