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クラウドも巻き込むTVストリーミングのAereo 最高裁でテレビ局と対決

テレビ業界の再送信料金に痛手

 この裁判はいくつかの点から注目されている。まずテレビの将来だ。地上波テレビ局側がCATVや衛星放送から得ている再送信料は、年間30億ドルともいわれており、各社にとって大きな収益源だ。もし最終的に敗訴となれば、このビジネスモデルも脅威にさらされる可能性がある。「もし、小さなベンチャー企業にすぎないAereoが勝てば、伝統的な放送事業者のビジネスモデルが崩壊し、放送業界の運営を再編するほどの影響を与える可能性もある」とTimeは記している。

 消費者が自宅の屋根にアンテナを設置して無料でテレビを視聴する。そして、そのテレビ番組を本人が所有するDVRに録画して友人と一緒に後で見る。これが合法なのであれば、そのアンテナを実際に所有していたり、物理的にDVRを所有していることがそれほど重要なのか、というのがAereo側の主張だ。

 同社は、遠隔にある小さな大量のアンテナ、そしてクラウドにあるDVRは、これまでのアンテナとDVRと変わらないと主張している。4月22日の口頭弁論で、Aereo側の弁護士は「単に機器を提供しているだけ」とし、「(著作権侵害の)実演ではない」と述べた。

 一方、テレビ局側は、著作権で保護されているテレビ番組をキャプチャし、ユーザーにストリーミングすることはケーブルテレビとなんら変わりがなく、再送信料が適用されると主張している。ABCの弁護士は、著作権で保護されたテレビ番組を勝手に奪って加入者にアクセスを提供しており、これは「実演」にあたるとした。

 もしTV局らが仮にAereoを撃退できたとしても、インターネットは電話、出版などさまざまな業界を土台から揺るがしている。それも見越してか、テレビ局側は訴訟戦略と並行して対策を考えているようだ。Reutersによると、CBSなどは無料の地上波サービスを打ち切る、自社で独自に低コストのインターネットテレビサービスを構築するなどの手段に出る、と話しているという。そうなれば、地上波テレビがあってこそ成り立っているAereoには大きな痛手となる。

(岡田陽子=Infostand)