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社内から新CEOを選んだMicrosoft Satya Nadella氏の課題は (古い力構造の中での船出)

古い力構造の中での船出

 戦略実行にあたってClarke氏が懸念するのは、Nadella氏の経験不足よりも、同氏が置かれた環境だ。これを別の言葉で表現したのが、Guardianが「ジョブナンバー1(最優先課題)」に挙げた「崩壊(Disrupt)」だろう。前任のBallmer氏は取締役会で目を光らせており、Gates氏は技術アドバイザーとして3分の1の時間を割くとビデオで述べている。

 Financial Timesは、Nadella氏の従業員あてメールの行間を読み取りながら、Nadella氏が文中、まず「Steve and Ballmer」、その次に「Bill and Steve」と、順番を変えて(Bill)Gates氏と(Steve)Ballmer氏を記しているという配慮を指摘する。Nadella氏のメールはその後、「Bill(Gates氏)に企業(Microsoft)に時間を割くよう頼んだ。とりわけ技術と製品にフォーカスして」と続いているが、ZDNetはCEOという役割を理解しているのであれば、「なぜ助けが必要なのか?」とGates氏の関係を問う。

 取締役会、Gates氏に加えて、Ballmer氏を退任に追いやったといわれる“物言う株主”ValueAct Capitalの存在もある。Microsoftがハードウェアに傾くのをValueActが快く思っていないことは、ReutersやGuardian、Foley氏など多くが指摘している。Bing、Xboxなどのコンシューマー向け製品はもちろん、コア事業のOfficeやOSについても、OfficeをWindows OSと切り離してiOSなど他のOSに対応させていくのか、SQL ServerもOSとの切り離しを進めるのかなど、考えるべきことは多い。

 そんな中で、かじ取りをしていくNadella氏が置かれる場所を、Guardianは「海」にたとえる。そして、同氏は「古い力構造の中に組み込まれた中で、新しい戦略を編み出さなければならない」と続ける。

 Nadella氏のMicrosoftは船出した。行く先がどこになるのか、世界が注目している。

岡田陽子=Infostand