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IaaS市場の第2フェーズへ Google Compute Engine正式提供 (AWS対抗で不足しているもの)

AWS対抗で不足しているもの

 Googleのクラウド戦略をみてみよう。同社は「Google Cloud Platform」をベースに、PaaSの「Google App Engine」、クラウドストレージの「Google Cloud Storage」、分析機能の「Google BigQuery」を取りそろえている。そんな中でのGCE正式版化だ。PC Worldはクラウドプラットフォーム担当マーケティングトップの「(GCEは)われわれにとって長期的、戦略的賭けとなる」というコメントを紹介しており、Googleが非常に力を入れていることを紹介している。

 GCEは確かに正式版になったが、以前からベータとして一般提供していた。これまでの経過を考えると、正式版になったからといって急激な変化はないと考えられる。GartnerのLeong氏も、すぐにAWS独占状態に変化が起きるわけではない、と述べている。

 だが、Googleでパブリッククラウドプラットフォーム担当ディレクターを務めるGreg DeMichillie氏は市場そのものの拡大を予言する。DeMichillie氏はNew York Timesに対して、「(クラウドとは)これまでデスク上で利用してきたコンピュータの新しいバージョンを低価格で提供することだと思われているようだ。しかし、これは分散されたコンピューティングインテリジェンスであり、コンピュータや携帯電話に限定されず、車、温度計とさまざまなものに広がっていく。需要は増す一方だ」と述べている。

 なお、DeMichillie氏はGoogleがAWSから引き抜いた人物で、AWSとの競合については「Googleがこれまで蓄積してきたデータセンターでの知識は、より堅牢で信頼できるサービスの提供につながる」と述べている。

 展望は悪くないと言えそうだ。New York TimesはGCEを早期から導入しているソーシャル写真サービスSnapchatを紹介している。創業2年にして毎秒4000件もの写真を処理しているSnapchatは、これまで物理サーバーを1台も保有したことがないという。同紙は「Googleはクラウド市場で競争できる数少ない企業の1つ」としながら、年間10億ドル事業に成長した一般ユーザー向けのクラウドサービス「Google Drive」が、広告収入を柱とする同社の中で優先順位が低い状態であることなどを指摘する。

 Leong氏も同じような見解を示しており、GoogleがGCEで成功するための障害は技術ではないと指摘。「Googleがメインストリームの企業に進出するに当たっての問題は、市場進出計画の実行だ。これに、信頼、実績、それに大企業が好むやり方での事業展開ができるかどうかだ」と述べている。

 Googleがブランド力をどう生かすか、クラウドの受け入れがどう加速するかで、パブリッククラウド市場の第2フェーズの展開は変わってゆく。

岡田陽子=Infostand