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「iTV」か「iWatch」か、それとも……AppleのPrimeSense買収 (買収の目的)

買収の目的

 さて、買収が確実なものになったところで、業界の関心は「その目的」に移った。多くのメディアはMicrosoft Kinectの例から、多くはAppleがリビングルーム戦略を強化する、と考えた。しばしばうわさに上る“iTV”は、2010年に出版されたSteve Jobs氏が自伝の中で、次世代TVへの意欲を示していたことからも確度の高いものと考えられている。Google、Microsoftなど各社がリビングルームに向けた戦略を強化しており、Appleも同様というわけだ。この文脈ならPrimeSense買収は説明しやすい。

 ReutersはJefferiesのアナリスト、Peter Misek氏の見解を引用する。「iTVが今後6カ月から12カ月で登場するという証拠はなにもない。だが、リビングルーム向けアプライアンスは何らかの形でAppleの将来(ビジョン)の中に入っており、ジェスチャー技術は重要になるだろう」

 Financial Timesは「Appleが、PrimeSenseの技術を、うわさされているテレビに使う可能性はある」としながらも、Microsoftが最新のKinectでは自社開発技術を利用していることにも触れている。そして、PrimeSenseのCEO、Inon Beracha氏の「われわれは最初の3Dセンサー企業ではない」「われわれは(3Dセンサー技術を)理論から実践に移し、マス製造に発展させたのだ」というコメントを紹介している。

 これらの見方に一石を投じたのが、Wall Street Journalのハイテクジャーナリスト、Jessica Lessin氏のブログだ。Lessin氏は、買収目的はiTVという予想について「そうは思わない」と一蹴。地図技術が本命と予想した。

 根拠は3つある。まず1つ目は、PrimeSenseのモーションセンサー技術はそれほど先進的ではないとの業界筋の見解だ。2つ目がテレビだ。Lessin氏は、AppleのTV戦略について、テレビよりもSTB(セット・トップ・ボックス)に関心があり、初期試作機ではモーション技術は含まれていないという情報筋の話を明かす。コントローラーという点では「iPhoneやiPadが既にその役目を果たしている」とも付け加える。

 そして3つ目が、Appleの地図技術強化だ。同社は2012年の「iOS 6」で「Google Maps」に代わって自社製地図アプリを導入。これが不人気でCEOのTim Cook氏は謝罪を余儀なくされた。Appleは今年に入って屋内位置情報技術のWifiSLAMを買収しており、戦略的に重要視していることを裏付けた。もちろん、ライバルGoogleとの対抗上も重要となる。Lessin氏は「近い将来、スマートフォンで訪問したい場所や現在向かっている空間のスキャンを表示できるようになる。2次元の地図は古い技術になるだろう」と予想する。

(岡田陽子=Infostand)