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Gates氏の再登板・会長退任も? CEO探し中のMicrosoft (Gates氏の役割は?)

Gates氏の役割は?

 この書簡から数日後、Microsoftの共同創業者であるBill Gates会長について、大手株主3人が退任を求めていると伝えられた。最初に報じたReutersによると、株主3人はGates氏が新しい戦略を阻止し、新しいCEOの権力を制限することを懸念している。3人は合わせてMicrosoft株の5%以上を保有しているという。Ballmer氏に対する退任要求は過去にもあったが、Gates氏にやめるよう求めるのは初めてという。

 Gates氏は現在、Microsoft株の4.5%を保有する最大の個人株主である。毎年8000万株を売却しており、このペースでいくと2018年にゼロになるという。そして、現在4%を保有するBallmer氏が最大株主になる。

 一方で、New York Timesは数日後に、Gates氏のカムバックを思わせる動きを報じた。Microsoft本社に勤務する社員は、Ballmer氏退任が明らかになって以来、これまでより頻繁にGates氏を見かけるという。そして、Gates氏がこれまでよりも大きな任務に就いてMicrosoftを再び成長に導いてくれるのではないかという期待もささやかれているようだ。

 ライバルAppleのSteve Jobs氏も、事情は異なれど一度去ったApple CEOに返り咲いた。Jobs氏が戻った後、Appleは技術業界でもたぐいまれな成長を遂げた。また、DellのMichael Dell氏など、創業者がCEOとして復帰することは珍しくはない。

 Gates氏は2008年にフルタイムの業務をBallmer氏に譲っており、それ以来慈善活動をメインにしている。New York Times氏は情報筋からの話として、Gates氏が慈善活動を離れてフルタイムでMicrosoftに勤務することはないだろう、という話を複数から聞いた、とも記している。

 Gates氏の今後のMicrosoftでの役割について、意見はさまざまあるようだ。Microsoft株を保有する投資企業HighMark Capital Managementのポートフォリオマネージャは「以前からの懸念だ」と言う。「古い“守衛”を入れ替えることで、企業戦略をきちんと評価するのに必要な"酸素"を得られる」とReutersに語っている。

 また、ForresterのアナリストDavid Johnson氏はInformationWeekで、Gates氏は変化によい影響を与えないだろうと分析する。Johnson氏は「iPad」登場前にMicrosoftが開発したデュアル画面タブレット「Courier」プロジェクトは、Gates氏の影響でダメになったと指摘。Windowsと業務ソフトウェアに固執するGates氏の保守的な態度を株主が懸念しているのではないかと述べている。

 一方で、別のアナリストは、「(今の)Microsoftには技術ビジョナリーがいない。Bill Gates氏ならこの穴を埋められる」とReutersに述べている。

 後任が誰になるのか、憶測は飛び交っている。メディアに挙がった名前は、FordのCEO、Alan Mulally氏、eBayのCEO、John Donahoe氏、Siebel SystemsでCEOを務めたMike Lawrie氏などの外部の人材もあれば、Skypeのトップで買収によりMicrosoftに入ったTony Bates氏、元MicrosoftでNokiaのCEOを務めた後、再びMicrosoftに戻るSteve Elop氏、そして元Microsoftで現在VMwareのCEOを務めるPaul Maritz氏などの(元含む)内部人材もいる。

 Ballmer氏とGates氏の後任探しを進めているのが取締役で新CEO選任委員会会長のJohn Thompson氏だ。38年の歴史で3人目のCEOとなる人物を選ぶカギを握ることからも、メディアの注目を集めている。Thompson氏はSymantecのCEOを2009年に辞めた後、Virtual InstrumentsでCEOを務めており、Microsoftの取締役には2012年に就任した。Ballmer氏の退任発表を受けて選任委員会の会長となった。

 実はThompson氏とMicrosoftとは複雑な関係にある。Thompson氏は、最初のキャリアである27年間のIBM勤務でOS/2でMicrosoftと競合。SymantecのCEO時代は、Microsoftがセキュリティに拡大する時期と重なった。こうした経緯から、IBM時代からの友人に「なぜライバルを助けるのか?」と聞かれることがあるという。

 Bloombergによると、これに対してThompson氏は次のように答えている。「(Microsoftは)われわれの業界のみならず、米国にとって象徴的な企業だ。私が42年のキャリアで得た知識で、小さなことでもこの企業を助けられるチャンスがあるのなら、ぜひともそうしたい」。ソフトな人当たりで人望も厚いというThompson氏は、投資家との関係修復、取締役会の要求など“政治”“外交”でも重要な役割を担っているという。

(岡田陽子=Infostand)