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人間とマシンは近づき、クラウドは幻滅期 Gartnerの新版Hype Cycle (「ビッグデータ、クラウドなどは下降線へ」)

「ビッグデータ、クラウドなどは下降線へ」

 2013年版のHype Cycle for Emerging TechnologiesでGartnerは、2000以上の技術を98の技術グループに分類して分析している。上記のモバイルロボット、IoTなどは期待度が上昇している(テクノロジの黎明期にある)一方で、ビッグデータ、コンシューマー向け3Dプリンティング、ゲーミフィケーションは期待度をほぼ上り切った段階(過度な期待のピーク期)にある。他方、NFC、マシン間通信サービス(M2M)、AR(現実拡張)、クラウドコンピューティング、仮想現実などは「幻滅期」に入った。「啓蒙活動期」にあるのはエンタープライズ向けの3Dプリンティング、バイオメトリクス技術を利用した認証など。音声認識、予測分析が「生産性の安定期」に位置づけられている。

 業界で一定の評価を得ているHype Cycleレポートだが、反論もある。例えば「幻滅期」とされたクラウドコンピューティングについて、地元ベンダーを中心とした英国のクラウドコンピューティング業界団体Cloud Industry Forum(CIF)は強く異議を唱えた。

 CIFの声明文によると、「クラウドはさまざまな方法で多く受け入れられているという現実」があり、さまざまな技術をクラウドコンピューティングという一言で総称し、一つの点で成熟度と期待度を表現するGartnerの評価には無理があると主張。クラウドにはさまざまな実装やサービスモデルがあり、それぞれの成熟度と期待度の現状は異なるとする。また、「クラウドは“幻滅期”にあるというのは、英国市場では誤った認識だ」とし、地域による温度差も指摘した。

 「過度な期待のピーク期」の頂点にあるビッグデータについては、All Things Digitalが異論を述べている。「過度な期待のピーク期」の次は、急な坂を落ちる「幻滅期」に入ることになるが、ビッグデータ関連のベンチャーClouderaやHortonworksなどはベンチャーキャピタルらから順調に資金を調達しているし、ビッグデータプロジェクトの大きな失敗のニュースもなく、ビッグデータ分析技術「Hadoop」の開発も順調に進んでいる、と筆者のArik Hesseldahl氏は指摘する。それだけでなく、ライバルのIDCは、Hadoop関連事業の企業の売り上げが2016年には倍増するという予想を打ち出しているという。

 もちろん、Hype Cycleレポートは予想であって、見極めの難しい技術トレンドの大きな流れを読むための指標の一つにすぎない。関係者もあまり神経質になる必要はないだろう。

岡田陽子=Infostand