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北朝鮮初の国産スマートフォンの謎 第1書記自慢の「アリラン」 (実は中国製?)

 Arirangで専門家らはもう1つの分析をしている。朝鮮中央通信はArirangがMay 11 Factoryで製造されたと記しているが、実際は中国製ではないのかというのだ。工場を訪問する金氏の写真がいくつか紹介されているが、どれも工場スタッフが完成した製品を検査する場面しか写っていない。

 北朝鮮のハイテクに精通したジャーナリストのMartyn Williams氏のブログNorth korea Techによると、国営の朝鮮中央テレビ(KCTV)の金氏の工場訪問のニュースでも、動画でなく写真だけで報じており、完成された製品を検査するスタッフの姿しか写っておらず、製造の模様はないという。

 こうしたことから、Williams氏はArirangが中国で製造されたものを持ち込んだとみる。Williams氏は以前、Samijyonタブレットが中国製であることを写真とともに暴露しており、Ars Technicaに対し、製品が本物の携帯電話であることは確信しているが、北朝鮮は以前にも正確でない主張をしたことがある、と語っている。

 「北朝鮮にはハードウェア製造の専門知識はほとんどない。得意とするのはソフトウェアだ。中国がすばらしい製品を安価で製造できるのに、なぜ(北朝鮮が)ハードウェア分野で空騒ぎをする必要があるのか?」とWilliams氏は述べている。

 一方で、スペックを報じたTech In Asiaは、中国の工場では、いまどき1メガピクセルのカメラを製造しておらず、100%中国製と断じることもできないのではないか、との見方を示している。

 朝鮮中央通信の記事は「金氏は、Arirangという商標が端末に刻まれているのを見ながら、『朝鮮民主主義人民共和国の商標が入った製品の大量生産は、国民のプライドと自尊心を植え付けるだろう』と述べた。『自生技術を使った製品の生産に成功したことを見るのは素晴らしいことだ、自国のものを愛すると言う点で教育的に重要だ』とも述べた」と伝えている。

 国産スマートフォンの製造には、国民の信頼や愛国心を高める目的もおおいにあるだろう。朝鮮半島の代表的な民謡「アリラン」の名を冠しているのも、そのためとみられる。

 今年1月に北朝鮮を訪問したGoogleのEric Schmidt会長は、同国だけがインターネットから孤立した状態で居続けると、経済成長に大きな悪影響があるとして、インターネットを国民に開放するよう提言した。これはそう簡単には実現しそうにないが、かといってインターネットを完全にシャットアウトし続けるのも困難だろう。Arirangで制限付きながらインターネットを利用可能にするのか、興味深いところだ。

岡田陽子=Infostand