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北朝鮮初の国産スマートフォンの謎 第1書記自慢の「アリラン」 (携帯電話加入者200万人、だがネットアクセス禁止)

携帯電話加入者200万人、だがネットアクセス禁止

 北朝鮮のモバイル通信事情を、メディアの報道からまとめてみよう。イントラネットは2002年に国内専用で導入され、省庁の中にはWebサイトを持つところもあるという。だが利用は国により監視されており、アクセスできるサイトにも制限がある。もちろん外のインターネットにはアクセスできない。

 携帯電話が導入されたのは2008年。エジプトのオペレーターOrscomの協力を得て、国内ユーザー間の通話用サービスとして開始した。当然、インターネットブラウジングなどはできない。加入者は現在200万人を数えるという。同国の人口は2300万から2400万人と言われているので普及率は低いが、それでも2011年に60万人だったことを考えると増えている。

 国内の相手と話すことしかできず、インターネットにもアクセスできない。それなのに、どうして金氏はタッチ画面を持つ新しいスマートフォンを大々的にアピールするのだろう? これはWashington Postが分析している。まず金氏はスイスに留学した経験があり、そこで外の文化を楽しんだ。自身はすでにスマートフォンユーザーのようで、ニュース写真の中に、金氏の机の上にスマートフォンが置かれているのをGizmodoなどがみつけて指摘していた。

 だがより重要な理由として、国内で高まるスマートフォンへの需要を制御する目的があるとWashington Postはみる。すでに携帯電話が禁止されていた1990年代にも、携帯電話は中国の国境からヤミ市場を通じて国内に入ってきており、タッチ操作ができる機種も入ってきている。国境付近では中国のキャリアを経由するなどしてインターネットにアクセスしたり、国外と通話する人がいるという。

 このようにして入手したスマートフォンを使って“外界”にアクセスする人が増えることは好ましくない。ならば、自分たちがモニタリングして管理できるスマートフォンを用意すれば、市民は外からこっそり入ってくるスマートフォンを求めなくなる、という思惑ではないか、と指摘している。

 朝鮮中央通信は「(Arirangで)北朝鮮のスタイルでアプリケーションプログラムを開発し、セキュリティを厳格に保証しながら最高の利便性を提供する」と伝えている。Arirangは、政府が国民の携帯電話の利用をモニタリングでき、国民もタッチ端末を利用できる解決策、というわけだ。

(岡田陽子=Infostand)