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パブリッククラウドに落ちる影 「PRISM」スキャンダル (米国のパブリッククラウドに対する信頼性が低下)

米国のパブリッククラウドに対する信頼性が低下

 9社のサービスは主としてコンシューマー向けではあるが、クラウドという点では企業も無関心ではいられない。PRISMの影響はすでに企業向けのクラウドサービスにも出ているようだ。

 データ暗号化などクラウドセキュリティサービスを提供するVaultiveのCEO、Elad Yoran氏によると、PRISMの記事以来、SaaSを利用している企業はどのようにデータを保護すればよいのかなど、セキュリティに関する問い合わせが次々と寄せられているという。PRISM関与が名指しされたうちGoogleとMicrosoftは企業向けにも電子メールやオフィスサービスを提供しており、他の事業者についても警戒心が高まっているとGigaomに語っている。

 PRISMスキャンダルによりパブリッククラウドが打撃を受けると見る関係者は多い。PRISMに加え、NSAがVerizonも監視しているという記事を受け、Infoworldは「NSAがクラウドを殺している」と題してパブリッククラウドの危機を報じた、

 パブリッククラウドに尻込みする大きな理由がデータの安全性であり、NSAの監視行為は「(被害妄想する)“クラウドパラノイド”を加速させる」と見る。中でも米国のクラウド事業者への影響を予想するのが、クラウド業界ニュースのTalkin' Cloud。NSAなどが監視対象にできるためだ。Enderle Groupのアナリスト、Rob Enderle氏は「米国のクラウド事業者の信頼性が損なわれ、企業は米国外の事業者やオンプレミスソリューションへの移行を検討する」という可能性を指摘している。

 Reutersはその兆候を報じている。フランスでは、政府が進める国家クラウドへの関心がここにきて急に高まったという。「知らないうちに(米国機関に)スパイされても、米国民でなければ(プライバシーの保護など)なんの権利もない」と仏政府の支援を受けたクラウド事業者Numergyの代表者はコメントしている。フランスに限らず、欧州の通信事業者やクラウド事業者はPRISMにより米国の大手クラウド事業者に対する信頼が低下したのを好機とみていると伝えている。中国でも企業や政府の懸念が高まっているという。なお、欧州連合は米政府にPRISMに関する説明を求めている。

 このような状況について、北欧のセキュリティ企業F-Secureの最高研究責任者、Mikko Hypponen氏は「どうせビックブラザーに監視されるなら、外国よりも自分の国のビックブラザーを選ぶものだ」と皮肉っぽくコメントしている。

(岡田陽子=Infostand)