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パブリッククラウドが本流へ 2016年クラウド展望

「プライベートクラウドは失敗?」

 2015年のクラウド界の大きな話題の1つは、Amazonが四半期の決算で初めてAWSの業績を公表したことだ。第2四半期と第3四半期との2四半期で明らかになった事業の実態は、2四半期連続の黒字だった。第3四半期の営業利益は5億2100万ドル、営業利益率はAmazon全体の4%に対し25%と報じられている。予想を上回る業績に、クラウドの可能性への確信がさらに強まった。

 そんな中、AWSの歴史を中心にパブリッククラウドの動向をまとめたWired.comは「プライベートクラウドの鈍化」を予想する。パブリッククラウドは当初、ベンチャー企業や小規模企業の間に普及したが、このところ大企業にも浸透している。同時に、これまで大企業向けのソリューションとされてきたプライベートクラウドという考え方にも逆風が吹き始めている、という。

 「大企業内では、“プライベートクラウド”といわれるクラウドプロジェクトはことごとく失敗している」と、自動化技術ベンダーのChefでCTOを務めるAdam Jacob氏はWired.comに語っている。プライベートクラウドの多くはオープンソースのクラウド基盤「OpenStack」をベースにAWSの模倣を狙ったものだが、「実に無理があり、パブリッククラウドを使うのとは全く違う。とても難しく、実現に必要なソフトウェアも良くない」(Jacob氏)と手厳しい。

 プライベートクラウドは、社内にあるハードウェアでAWSのようなクラウドを構築して自由にリソースやサービスを設定、起動、利用できるようにするというものだが、その誕生は、顧客のニーズありき、でなかったとWired.comは指摘する。「パブリッククラウドが台頭し始めた当初、政府や大企業が抱いていたセキュリティへの懸念をうまく利用しようと、それまで企業にサーバーやストレージなどのハードウェアを導入してきたIBM、HP、Oracle、Dellといったベンダーが持ち上げたものにすぎない」と辛辣だ。

(岡田陽子=Infostand)