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「EU vs Google」戦いの火ぶた 欧州独禁法訴訟へ

ショッピングは始まりにすぎない?

 ECへの苦情はショッピングにとどまらず、トラベル関連など多岐にわたった。そのため今回の異議告知書で対象分野をショッピングに絞ったことについて、Wall Street Journalは“驚き”としながらも、「範囲を限定することで、早期に結論を出すつもりだろう」との弁護士の分析を紹介する。一度前例をつくれば、他の分野へも適用しやすい。Reutersによると、ショッピングが最初に苦情を受けとった分野であり、件数も多かった。他の分野での調査は今後も継続するという。

 ショッピングだけでは終わらないという兆候はすでにある。ECはAndroidについて正式な調査を開始することも発表した。この中で、GoogleがAndroidを採用するデバイスメーカーに対してGoogleのアプリケーションやサービスのひも付けを義務付け、あるいは奨励していると述べている。

 欧州でのGoogleに対する風当たりは厳しくなりそうだ。この状況は、サーバーに始まり、ブラウザー、メディアプレーヤーと拡大していった対Microsoft訴訟と似ているという。

 しかし、Googleの独占乱用が認められたとしても、是正措置は簡単ではないとの見方もある。Voxは、検索結果に他社のものも等しく表示されることが望ましいが…としながらも、Microsoftのときの状況を挙げる。

 Microsoftのブラウザーバンドルが競争法違反と認定された後、EUとMicrosoftはブラウザー選択画面を表示することで合意したが、適切に表示されていなかったなどの問題があった。またメディアプレーヤーについても、バンドルしないバージョンの提供で合意したが、通常版と比べ、売り上げはごくわずかにすぎなかった。さらに、検索結果のデザインに規制当局が関与することは、逆に利便性やイノベーションを後退させるだろうとも懸念する。

 Googleはいったいどう対応するのだろう? Re/Codeが入手したGoogleの社内メモから、ある程度うかがい知ることができる。

 「非常に残念だ」とするメモからは、長期戦を覚悟していることがうかがわれる。「批判の中には厳しいものもあるだろう。だが、われわれの主張を展開できるチャンスでもある」とも述べている。よりよいサービスを提供し、激しい競争の中で戦っているとの主張のようだ。そして、社員には「法務問題について社内・社外でコメントしない、自分が得意とすることにフォーカスするように」と呼びかけている。長い戦いが始まる。

岡田陽子=Infostand