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どう転身する? クラウド時代のIBM

クラウドの問題は「出遅れ」だけか?

 では、新しいモデルであるクラウドでのIBMの戦略はどうか。TechCrunchは、悪くはないと評価する。「わずか数年で100種類以上のSaaS業務アプリケーションをそろえ、IaaSではSoftLayerを手にした。そして世界中にデータセンターネットワークを構築した」というのがその理由だ。

 IBMはSoftLayer上の開発プラットフォーム「Bluemix」、それに開発したアプリのマーケットプレイスも立ち上げた。決算内容についても、クラウド分野の売り上げが前年から50%増となり、過去実績に基づく年間売上高ランレートが31億ドルになった点を挙げる。

 だが、Reutersは「IT投資の食物連鎖の中で、悪い側(食われる側)にいる」「悪い決断ばかりを下しているのではない。しかし、投資や買収で良い決断を下しても、市場の流れの中ではやや遅すぎだ」と、厳しいアナリストの意見をとっている。Financial Timesも「正しい戦略をとったが、そこまでにあまりに時間がかかった」(UBSのアナリスト)とのコメントを紹介している。

 FoxBusinessが紹介する投資顧問会社の代表Barry Randall氏のコメントは、さらに踏み込んでいる。「(IBM内で)クラウドに移行して、これまでと同じ売り上げを維持しようと期待できない」ことから、クラウドへの移行がためらわれているのだという。

 「クラウドは使った分だけ払うというユーティリティであり、ユーティリティの主な価値は信頼性、予知性、低いTCOだ。これはイノベーションを製品化し、継続的にアップグレードするというこれまでの技術業界の価値観とは大きく異なる」と分析。顧客とのつきあい方やサービスのあり方が変わる中で、既存の考え方ではもはや顧客を取り込めないというのだ。

(岡田陽子=Infostand)