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AWSがCIAの契約獲得 クラウド業界の地殻変動?

かみ付いたIBM

 CIAは2013年2月、契約先としてAWSを選んだ。クラウド構築にあたってCIAは、民間企業とのコラボレーションを戦略として進めたようだ。CIO Magazineは「柔軟性のあるクラウドソリューションを提供し、かつ財務的に安定した確立されたベンダー数社を招いて」検証を進めていたと伝えている。結果としてAWSが選ばれたが、これに抗議するベンダーがあった。政府系で強い老舗IBMだ。

 IBMは「データ処理に関するCIAの要件を適切に理解できなかった」として再度検討するよう求めた。だが、米連邦請求裁判所は同10月、「AWSのオファーの方が技術的に優れており、競合の結果は、接戦とは言いがたいほどかけ離れていた」とIBMの要求を退けた。

 このことは、コンピュータ業界にインパクトを与えた。これまでどちらかというと保守的で信頼性を重視してきた政府機関にとって、IBMやHewlett-Packard(HP)などの老舗ベンダーは安全な選択肢として好まれてきた。一方のAWSは、クラウド専業のベンチャーとして2006年に立ち上がった、いわば新参者だ。

 AWSは主としてベンチャー企業や一部の先進的な企業を“理解者”とするニッチなベンダーとして拡大してきた。だが、政府機関、それも情報を生業とするCIAが、IBMではなくAWSを選んだ――。これはクラウドがメインストリームになったことを示すものであると同時に、クラウド時代のベンダーの顔ぶれが変化する兆候を感じさせる。

 AWSは既にインターネットの総トラフィックの1%を占めているとする調査もある。クラウドの時代は、IBMやHPなどの老舗からAWSやGoogleなどニューフェイスへと主導者が移るのだろうか?

 Wall Street Journalは、IBMとAWSの両社の政府向けの取り組みをまとめている。それによると、IBMはこれまでCIAを顧客としており、新しいソフトウェアをテストする目的で無料提供するなどの関係を構築しているという。同社がこのところ強化している人工知能の「Watson」も、2年ほど前からCIAや米国家安全保障局(NSA)でテストされているという。

 一方、AWSはクラウドの最大の障害となっているセキュリティへの懸念を払拭すべく、努力を重ねてきた。例えば、米国政府のクラウドの安全性のためのプログラムFedRAMP(Federal Risk and Authorization Management Program)の順守、米保健福祉省(HHS)による認可などがある。同社は政府向けのクラウド「AWS GovCloud」、金融機関向けクラウド「FinQloud」といった業界専門のクラウドも展開している。Wall Street Journalによると、AWSはすでに300以上の政府機関を顧客にしているという。

(岡田陽子=Infostand)