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仮想化とパブリッククラウドの両王者が急接近 VMwareとAWSの提携

誰が負け組になるのか?

 両社の提携への反響は大きい。提携のメリットを見てみよう。

 VMwareにしてみれば、顧客がVMwareで動かしてきたワークロードをAWSに簡単に“リフト&シフト”(物理サーバーの移行)する道筋を示すことができる。VMwareは数年前からソフトウェア定義データセンター(SDDC)戦略にシフトしており、「VMwareのエンタープライズ級のSDDCをAWSに持ち込み、vSphereベースのプライベートクラウド、パブリッククラウド、そしてハイブリッドクラウド環境で、顧客は任意のアプリケーションを動かすことができる」とブログで説明している。

 顧客はデータセンターとAWSクラウドの間でシームレスにワークロードを動かし、AWSサービスとの統合もシームレスに行うことができると同社は強調する。

 AWSのメリットはどうか。NewsFactorは「自社のオンサイトのインフラの範囲を超えたタスク向けに、AWSのサービスをバックアップとして使いながら、社内のワークロードの一部を簡単に動かす方法を探している顧客には朗報となる」とし、これを「AWS顧客の勝利」とした。またAWSはハイブリッドクラウド戦略の一部として自分たちのサービスを売り込めると分析する。

 提携を分析したNetwork Worldも、AWSのメリットとして、ワークロードが増えることとハイブリッド戦略の強化を挙げている。「AWSはずっとプライベートクラウドを提供するという考えを拒否してきた。自分たちのインフラを顧客のデータセンターに拡大するということについては、最小限の取り組みしかしてこなかった」と述べている。

 Network Worldは、この提携の“勝ち組”と“負け組”を分類して見せる。勝ち組は、VMware、AWS、ユーザー企業。一方負け組は、Microsoft、IBMというパブリッククラウドを提供するAWSの競合。そして、クラウド管理ベンダーだ。

 MicrosoftはAWSの最大のライバルだが、これまでその差別化要因の一つだったのがAzureで進めてきたハイブリッドクラウド戦略だ。VMwareとAWSは互いをパブリッククラウドとプライベートクラウドの優先パートナーとすることで、AWSはハイブリッドクラウドを間接的に提供できるようになる。

 これがMicrosoftが負け組に分類された理由だが、一方で、Network WorldはAWSとVMwareの握手は「Microsoftのハイブリッド戦略が正しいことを認める証」だとも指摘する。

 なお、MicrosoftはNetwork Worldに対して、「Microsoft Azureは設計段階からハイブリッドクラウドであり、十年以上にわたるMicrosoftのエンタープライズの経験に基づくものだ。本物のハイブリッドクラウドとは単に接続すればよいというものではなく、開発、管理、セキュリティなどで一貫性が求められる」と述べ、1社単独で提供する優位性をアピールしている。