Windows Server 2012研究所

サービスパックではなく、まったく新しいWindows? Windows 8.1を見る 【後編】IE11とクラウド連携編 (SkyDrive連携とBing連携による改善)

SkyDrive連携とBing連携による改善

 Windows 8.1は、クラウドストレージのSkyDriveをドライブとして利用できる。今までのように単にSkyDriveにアクセスできるだけでなく、OSのドライブとしてSkyDriveがシステム上で認識されている。

 OSのシステムにSkyDriveが組み込まれているため、すべてのModernアプリでファイルやフォルダを開いたり、保存したりする時に、SkyDriveへのアクセスが用意されているということだ。

 例えば、音楽を再生するMusicアプリでは、ファイルを開くを指定するとSkyDriveが選択できる。もしSkyDriveに音楽ファイルが保存されていれば、SkyDriveから音楽を再生することも可能だ(ビデオ再生も同じようにSkyDriveから行える)。

 またデスクトップモードにおいても、OSをインストールした状態でSkyDriveをサポートしている。Windows 8のようにオプションソフトのインストールは必要ない。

 ただ大きな問題となるのは、SkyDrive以外のクラウドストレージを選択することが現状ではできないことだろう。企業においては、個人向けのストレージサービスを利用するのではなく、Office 365のSkyDrive Proや、高い管理性を持つ企業向けのストレージサービスを利用したいというニーズがあるが、現状では設定を変更できないようだ。

Musicアプリで「ファイルを開く」を選択する。
ドライブとしてPC、SkyDrive、ネットワークなどが選択できる。ここで、SkyDriveの音楽フォルダを指定して、クラウドストレージから音楽を再生することもできる
SkyDriveアプリを起動すると、SkyDriveに保存されているフォルダやファイルが表示される
デスクトップモードでは、SkyDriveフォルダを選択すればクラウドストレージに保存されているフォルダやファイルが表示される
SkyDriveの画像に保存された写真を写真アプリで編集。クラウドストレージに保存されている写真が直接編集できる

 Windows 8.1では、すべての検索がBingに集約されている。ローカルドライブのファイル検索、アプリ検索なども、Windows 8.1に用意されているBingエンジンが採用されている。

 検索のすべてをクラウドからローカルまでBingで行うことで、一貫した検索情報の表示が可能になっている。検索対象の場所を「すべての場所」、「設定」、「ファイル」、「Webイメージ」、「Webビデオ」などが選択できるようになっている。

Bingは単なる検索ではなくAPIプラットフォームとして提供されている
チャームの検索から文字を入力するだけで項目をリストアップしてくれる

 またBing検索の特徴といえるのは、単なるキーワード検索を行うだけでなく、ユーザーが必要とする情報を検索するようになっている点である(行動のためのエンジン doengineを利用)。

 つまり、検索結果のリスティングをGoogleのようにページリンクから行うのではなく、ユーザーの疑問に答えを出すような知識を提供しているのだ。さらにBingでは、ソーシャル検索の機能を強化して、質問に対しての答えをできるだけ提供するようになった。

 例えば、マリリン・モンローをWindows 8.1で検索すれば、マリリン・モンローの生年月日や没年、代表作などがWeb上のイメージ写真と共に表示される。これにプラスして、Wikipediaなど、さまざまWebサイトが縦スクロールで表示されている。

マリリン・モンローを検索するとWebサイトの情報だけでなく、マリリン・モンロー個人の情報が表示される
検索画面を右にスライドしていくとWebサイトの情報も表示されている。昨年公開された映画のWebサイトも見つかった

 Build 2013のデモでは、地名を入力するとWebサイトの情報だけでなく、地図を表示したり、付近の観光案内を表示したりしていた。日本において、欧米で提供されるだけの情報提供が実現するかどうかは、日本語や日本に関する情報がどれだけBingに納められるかにかかっている。

 Bingマップを見ても、まだまだ充実しているとは言いがたい。このあたりは、Windows 8.1がリリースされてすぐに変わるわけではないだろう。もう少し、時間がかかるように思う。

Buildでデモされた3Dの建物が入ったマップ。新しいBingマップは開発中で、Windows 8.1がリリースされるタイミングで公開される。ただし、欧米のマップが中心となるようだ
Buildのデモでは、カメラで撮影した文字イメージを認識してテキスト情報に変換。さらに、Bing翻訳でスペイン語を英語に変換。Bing翻訳は日本語をサポートしているが、イメージ認識は日本語がサポートされるか不明だ

 ユーザーの目から見れば、Windows 8.1のOSにBingが統合されただけと感じるが、開発者にとっては大きな変化が起こっている。Windows 8.1のAPI群としてBingプラットフォームが提供されることになったからだ。

 Bingプラットフォームでは、検索だけでなく、音声認識、音声合成、イメージ認識、翻訳、マップなど、クラウドのBingサービスが提供しているさまざまな機能をWindows 8.1から簡単に利用できるようになっている。

 例えば、JavaScriptでプログラミングされたModernアプリにおいて、翻訳機能をつける場合、プログラミングが膨大になり、現実的には無理があった。しかしWindows 8.1においては、Bingプラットフォームが提供されているため、簡単なAPIをコールするだけで、Bingの翻訳機能を利用することが可能になった。これにより、アプリの機能を大幅に広げていけるようになるだろう。

Windows 8.1では新しくリーディングリストというアプリが追加された。リーディングリストは、ブラウザのブックマークのようなモノで、対応したアプリのブックマークを記録する
リーディングリストは、ブラウザだけでなくマップなどからも利用できる。対応するアプリが増えれば、電子ブックやPDFなどのブックマークもできるかもしれない

 Windows 8.1は、見た目や操作などはWindows 8を踏襲している部分が多いため、ユーザーの使い勝手を多少変更したような、小幅な変更に見える。

 しかしOSの内部的には、Modernアプリができるだけ簡単に開発できるよう、大幅にAPIが追加されている。また、JavaScriptやHTML5でのModernアプリ開発が容易になるように、WinJS(Modernアプリ開発のためのJavaScriptライブラリ)を充実させるなどの改良が行われている。

 今後、企業においても、開発サイクルの短いプログラムは、JavaScriptやHTML5を利用したModernアプリで開発し、本格的なプログラムは、C/C++、C#などのプログラム言語を利用することになるだろう。このような環境が実現することで、Windows 8が求めたModernアプリ中心の環境へとシフトしていくのかもしれない。

山本 雅史