事例紹介

部門間の障壁を「Zoho CRM」で取り除き、経営加速へ~明和地所住宅流通

「仲介」「賃貸」「物販」の3部門で情報共有

企画課主任の木村裕一郎氏

 明和地所住宅流通株式会社は、クリオマンションシリーズの明和グループの中で、不動産の仲介、賃貸、売買、リノベーション、住宅設備機器・インテリア販売までを手がける企業だ。複数の会社が合併して現在の組織となったこともあり、「社内が縦割りで、顧客情報の管理が部門や営業マンごとにバラバラ」という課題を抱えていた。

 そこで2014年4月にクラウド型CRMサービス「Zoho CRM」を導入し、顧客や営業進捗の管理に使い始めた。その結果、各部門の生産性を向上し、縦割りだった部門間のコミュニケーションを促進、さらには経営のスピードも加速させた好例となった。実際にどのような課題を抱え、どのように解決していったのか。企画課主任の木村裕一郎氏に聞いた。

Excelで顧客管理、進捗状況が共有されず

 同社の事業は主に、不動産物件の広告掲載・問い合わせ対応・販売などを行う「仲介」、賃貸物件の管理・原状回復工事・入居中のトラブル対応・リノベーション提案などを行う「賃貸」、新築クリオマンション購入者にインテリアや家具といったオプションを販売する「物販」がある。さらに中古マンションを買い取って再販売する「投資開発」、事業用不動産を扱う「事業開発」を加えたトータルサービスを提供しているのが特徴だ。

 もともとはそれぞれ別の会社で、合併して今の明和地所住宅流通となったこともあり、「組織的に縦割りの状態だったのが課題でした」と木村氏は振り返る。

 木村氏が6年前に入社した「仲介営業部」では、販売管理や顧客情報がExcelや紙で管理され、それぞれの担当者が個別に保管している状態だった。マーケティングなどを担当していた木村氏が特に「もったいない」と思っていたのが、営業の進捗管理ができていなかったこと。「本人にしか状況が分からないので、どのように営業し、うまくいったのか、いかなかったのなら原因は、といったことが共有できていませんでした。結果の数字だけはExcelで確認できたので、取りこぼしが多いことは感じていましたが、全体的なITリテラシーの低さから有効な施策をとれない状態でした」。

 「仲介」以外の部門もそれぞれに問題を抱えており、賃貸部門では賃貸管理システムを導入済みだったが、マンションオーナーの管理が中心で借りる側の管理はあまり重要視されていなかった。「案件ごとに営業担当が割り振られるのですが、少ない人数で多くの物件を担当し、管理も営業担当が行います。業務量が多くて一杯一杯になっていたと思います。また、情報が属人化されていたので、お客さまから問い合わせが来ても、その人でないと事情が分からないというトラブルもよくありました」。

 物販部門でも、家具などの仕入れや請求が発生するため、ただでさえ他部門より手続きが複雑になるのにもかかわらず、「Excel、Access、紙で同じデータを何度も入力・参照しながら処理し、処理したものをさらに経理システムに入れるという無駄な手間をかけていました」と、業務フローが状況をさらに複雑にしていた。

 これらを整理しなければ――。そう思うと同時に、顧客をきちんと管理して情報を部門間で共有すれば、もっとできることがあると木村氏は感じていた。

 例えば、不動産を購入した顧客は、その物件を賃貸に出すかもしれない。また、購入した物件をまた売ることもある。「取引の終わったお客さまは、ほかの部署では見込み客になる。その横のつながりを作ることで、業績につなげられるのではないかと思っていました」。

 こうした背景や、以前の会社でCRMを使っていた経験もあり、CRMの導入を提案した。しかし「このときは会社がITに消極的だったことが障害となってCRMへの理解が進まず、決裁が下りることはありませんでした」。

(高橋 正和/川島 弘之)