事例紹介

クルマ選びの価値観を変えたい!――ガリバーのテーマパーク型店舗「WOW!TOWN」誕生秘話 (WOW!TOWN誕生秘話)

WOW!TOWN誕生秘話、速さの求められた開発

 「大型展示場で面白いことをやろう」というアイデアから始まったWOW!TOWN。展示スタイルとし、これまでの中古車販売とは一線を画そうという考えは当初からあった。しかし、「展示場だからお客さまがぐるぐる回る。そこに何か新しいモノを持ち込みたいね」ということで、iPadを使おうという案が立ち上がったのは、2012年4月ごろのことだった。第一号店の千葉・幕張店オープンまで残り3カ月ほどだ。

 急きょ、展示ガイドアプリのめまぐるしい開発が始まった。ただ、すでに従来型店舗でも活用していた販売管理システムがすでにAWS上に構築されていたため、QRコードで読み込んでくるクルマ情報のデータはそのまま流用できた。「この部分の作り込みを省略し、主にフロントのインターフェイスを開発すれば良かったので、短納期が実現できました」(同氏)。これはマッシュアップという形でクラウドの利点をうまく生かせた事例だ。

 それでもやることは多い。iPadアプリにどこまでの機能を持たせるか。iPadで顧客にどんな体験をしてもらうべきか。アンケートや適性診断、お気に入り機能などの仕様が矢継ぎ早に決められていく。開発スタイルは必然的にアジャイル。「iPad miniの仕掛けはスモールスタートして、運用が開始してからもブラッシュアップを続けました。最初はお客さまにiPad mini上で個人情報を入力してもらう仕様だったのですが、それは無理ということが運用してから分かって、途中から個人情報は紙とペンで書いてもらってシアタールームでムービーをご覧いただいている間に、スタッフがPCに登録するように変更しました。また、アンケートと適性診断のレーダーチャートの仕組みも開発する必要がありましたが、これは社内にこういう分析が好きなスタッフがいて助かりました」(同氏)という。

 こうしてiPad miniの仕組みが作られていった。現在、各店舗には約70台のiPad miniが用意されている。新規顧客、メンテナンスに来る顧客、商談のみの顧客、すべてひっくるめると月間およそ1000組(2~3人)の来場者数という。それだけの数を各店舗わずか7~9名のスタッフで対応している、というから驚きだ。展示場というスタイルやITを駆使した仕組みがあるからこそ、少人数でも問題なく回せている。閉場後の準備・片付けもこの人数でまかなえている。

 ITに対するガリバーの積極的な姿勢は、iPadの導入では国内で初めてAppleに事例化されていることからも分かる。AWSの利用にも積極的で、多くのシステムがクラウド化されている。販売システムについては現在、膨大な車体画像がAWS上に格納され、社内(データセンター)にあるデータベースとダイレクトコネクトで接続している状況だが、2013年中に社内システムの全面的なAWS移行を予定しているという。

 「クラウド移行によって多くのことが便利になりました。例えば、画像を保管するストレージを社内で運用していた際は常に容量を気にしなければいけませんでしたが、スケールアウトによってその心配が不要となりました。マッシュアップも容易となり、アイキューブドシステムズさんのおかげでAWSのノウハウが蓄積されたので、今後、さまざまなことがクラウド上で実現できると思います」(同氏)。

 今後は、ビッグデータ分析に取り組む予定も。システムには車両と顧客の情報が日々蓄積されている。「車両という観点では、例えば、どんなクルマを展示していくか。これまでは勘などに頼っていましたが、実際に見られるクルマと購入されるクルマは違ったりしますので、その最適なプランを分析する。一方で顧客という観点では、顧客行動を分析して、少人数でもより高効率な運用フローや、お客さまへのより最適な提案に生かしたい。そういったことにシステムに蓄積された情報が活用できると思い、分析システムも色々動かしています」(同氏)。現在はオンプレミスで運用しているというが、分析についても使い勝手などの観点からクラウドサービスへの移行を検討しているという。

 WOW!TOWNには常に新鮮なクルマに出会えるヒミツがある。毎日新しいクルマが入荷し、2週間後にはオークションに売却されるというライフサイクルの短さだ。今後、さらに店舗を拡大する予定もある。クルマが欲しいけど、どんなクルマが良いんだろう――そんな悩みをWOW!TOWNにぶつけてみよう。「あなたの大切な人と、ワクワクする未来を想像するのはいかがでしょうか?」(Webサイトより)

川島 弘之